5大栄養素は
三大栄養素(MacroNutrients)
と
ビタミンやミネラルなど(MicroNutrients)に分けられます。
三大栄養素の中でもたんぱく質は人間の生活にとって大切な多くの働きをしています。
炭水化物(糖質)の過剰もさまざまな問題を引き起こしますが、
たんぱく質不足もいろいろな病気に引き金になります。
今回はさらに深くたんぱく質を学んでいきたいと思います。
たんぱく質、脂質、糖質、栄養学(栄養素のエネルギー代謝)、ビタミンと学んできました。
5大栄養素にはあとミネラルがあるのですが、ここに進むまえに、
たんぱく質をもう少し深く掘り下げていきたいと思います。
掘り下げようと思えばどこまでも掘り下げられるのですが、
最低限知っておきたい、たんぱく質のヒミツを学んでいきましょう。
いま巷にあふれている栄養剤やサプリメントが
どれだけ意味の無いものかもおわかりいただけると思います。
サプリに頼るのではなく、糖質を控え、たんぱく質と脂質を
しっかりお肉や玉子からとることが薬いらずの健康な体への第一歩です。
たんぱく質は分解され、ペプチドになり、約20種類のアミノ酸まで分解されます。
20種類のアミノ酸を化学構造式で書くと、
となります。◯で囲んであるものが、前回もふれた必須アミノ酸というものです。
お肉やたまごはアミノ酸スコアが100であり(お米は65、小麦粉は35)であり、
しっかり食べれば体に必要なアミノ酸はきちんと補えます。
アミノ酸の化学構造式に共通なのが、
H2N-CH-COOHという部分です。CHから下にのびる部分(残基 R)でアミノ酸の種類がかわります。
H2N部分をアミノ基 COOH部分をカルボキシル基(酸性)と読んでいます。
アミノ酸のカルボキシル基とまた別のアミノ基が結合(ペプチド結合)してペプチドとなります。
たんぱく質はアミノ酸がさらに多数結合し、折りたたまれコンパクトになったものです。
たんぱく質が分解されるときには、この折りたたみを消化酵素が切断していくことで
アミノ酸まで分解され、体内に吸収されます。
これまでは代謝を「エネルギー生産」の意味で使ってきました。
栄養学的にはそれで十分なのですが、たんぱく質は人間の体でエネルギーとして
利用されるだけではありません。
ヒトが健康的に活動するために必要なものにアミノ酸が化学変化することも代謝とよばれます。
エネルギーになる以外の代謝としては
というものがあります
摂取したたんぱく質がそのまま筋肉や臓器のたんぱく質になるのではありません。
アミノ酸まで分解され、それが再度必要なたんぱく質に合成され、再び体を作っていきます。
人間は体重の約半分が水分です。そして20%がたんぱく質です。
水分を除いた部分では大部分がたんぱく質です。
筋肉、臓器、髪の毛、爪などで古くなったたんぱく質は、
アミノ酸から新しいたんぱく質を作ることで、入れ替えられていきます。
ちなみに、
胃腸の細胞は約5日周期
心臓は約22日周期
肌の細胞は約28日周期
筋肉や肝臓などは約2ヶ月間の周期
骨の細胞は約3ヶ月周期
細胞の新陳代謝が正常であれば身体は3ヶ月で新しく生まれ変わるとされています。
アミノ酸からどんなたんぱく質をつくるのかという設計図は細胞の中のDNAに記述されています。
そしてRNAといものがそれをもとにDNAを複製していきます。
RNAには三種類あります。
・mRNA(メッセンジャーRNA)DNAにある遺伝子情報をコピーしてできてくるRNAです。
・rRNA たんぱく質合成工場とされる細胞内のリボゾームに含まれます。
・tRNA(トランスファーRNA)は必要なアミノ酸を運んでくる役割をします。
体が必要とするとあるたんぱく質の設計図にもとづいて必要なアミノ酸を運びこんで
工場でたんぱく質を作っています。
20種類あるアミノ酸がいろいろな組み合わせで特有なつながりをすることで、
様々な機能を果たすたんぱく質ができあがります。
DNAやRNAにはプリン塩基やピリミジン塩基と呼ばれるものがあり、
これらもアミノ酸から合成されます。
たんぱく質を合成するDNAやRNAも、実はアミノ酸から合成されているのです。
ちなみにプリン塩基は痛風のひとがもっとも怖がるプリン体です。
たんぱく質の消化を促す酵素に、ペプシンやペプシノーゲンがありますが、
実はこれもたんぱく質の一種です。
たんぱく質でたんぱく質を分解するとはおもしろいですね。
そして、代謝のさまざまな場面で酵素というものが体内では重要な役割をするのですが、
これらも基本的にたんぱく質でできています。
人間は体内のグルコース(ぶどう糖)やグリコーゲンが枯渇すると必要とされる大部分のグルコースを
体内で合成することができます。それを「糖新生」と呼んでいます。
第13回 栄養学と糖質制限の「たんぱく質の消化・代謝」のところで、
アミノ酸はアミノ基転移反応により、α-ケト酸とグルタミン酸に分解されると説明しました。
α-ケト酸(ピルビン酸)はミトコンドリア内でTCA回路にはいり、エネルギー代謝に利用されます。
TAC回路内でクエン酸からオキサロ酢酸になり、またクエン酸にもどる過程でエネルギーが
代謝されるので、クエン酸回路ともよばれています。
(※電子伝達系、酸化的リン酸化を通してエネルギーは生産されます)
この図をアミノ酸による糖新生の視点でみると、
エネルギー生成の過程においてはピルビン酸は
アセチルCoAからクエン酸→イソクエン酸になりオキソグルタル酸になことで
TCA回路でエネルギーを作っていきました。
しかしながら、血糖値が低下して糖新生が必要なときは、
ピルビン酸はオキサロ酢酸に酵素によって変えられます。
アセチルCoAにはならずTCAサイクルでのエネルギー生産は抑制されます。
オキサロ酢酸はホスホエノールピルビン酸となって細胞質ゾルでグルコースに変えられ、
血中に放出されることで血糖値を上昇させます。
またTCA回路ではアミノ酸が2-オキソグルタル酸になり、そこからまたオキサロ酢酸になり、
糖新生に使われることになります。
アスパラギン酸もアミノ基を2-オキソグルタル酸に渡すことで、オキサロ酢酸に変わります。
アミノ基を渡された2-オキソグルタル酸はグルタミン酸になります。
複雑ですが、ようはグルタミン酸やアスパラギン酸がオキサロ酢酸というものになることで、
糖新生に使われることになります。
アミノ酸からカルボキシル基(-COOH)がとれてアミノ基だけになったものをアミンと呼びます。
アミンの中には、生理活性物質として人間が人間らしくいきていくために
必要な機能を持つ物質が多くあります。
その名称はおそらくどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。
もっともウソが多いのがコラーゲンです。
コラーゲンは本来骨の骨格となる部分です。
コラーゲンの周りにカルシウムがついて上部な骨を形成します。
コラーゲンは摂取すると消化酵素によりバラバラに分解され、一部は体外に排出されます。
そして再び体内で合成されるのです。
コラーゲンのサプリでの摂取には直接的に肌を綺麗にする効果はありません。
この他にもアミノ酸やビタミン、そして鉄分のサプリが販売されていますが、
気をつけないとただ単純に添加物や糖質を摂取してしまうだけの可能性が高くなります。
アミノ酸サプリの中には人毛から作られるものもあり、
ヒ素や水銀が混入している可能性も捨てきれないそうです。
そもそも、しっかりとした食事(肉卵チーズ)で健康的であれば、サプリのほとんどは必要ないものです。ほんとうに自分に必要な栄養素はなにかを把握してサプリを選んでいくことが大事です。
サプリメントについてもっと知りたい方はぜひ、
「サプリメントの正体 田村忠司著」を読んでみてください。
加工食品はさらに大きな問題があります。薬品による原材料の洗浄、調理法によって
素材そのものがもつ栄養素は大きく削られます。そこを添加物で補うわけです。
きちんと食べたつもりでも、栄養のないものをとり、添加物を摂取していれば健康的とはいえませんね。
この他にもたんぱく質には、
・旨味を感じる受容体となる
・薬を受け止める受容体となる。
・赤血球となる
・酵素となる
などとても重要な働きをします。
これらについては機会があれば「その3編」でふれたいと思います。
次回は「核酸」についてです。
お楽しみに。