前回までに、たんぱく質、脂質、そして糖質と学んできました。
現代の食生活では太る原因は糖質にあるということもわかりました。
人間が健康に生きていく上で、適切な栄養をとるということはとても大切です。
栄養というとどうしても食品に含まれる栄養成分を思い浮かべるかもしれません。
栄養そして栄養学とはなんなのでしょう。
栄養学における栄養とは
消化→吸収→代謝→排泄
というある栄養素を口にしてから、それが消化され、吸収され、エネルギーとして代謝され、
不必要なものが排泄されるまでをいいます。
私もそうでしたが、普段毎日口にするものがどうやってエネルギーになり、
排泄されるのかまったくもって知りませんでした。
でもそこに医者要らずで健康にいきる秘訣が書かれてあります。
(※お医者さんが必要ないということではないです)。
難しいことを言うとどんどん難しくなるので、ここでは簡単に栄養について
学んでいきたいと思います。
3大栄養素は
・たんぱく質
・脂質
・糖質(炭水化物)
でした。
5大栄養素は
上記3栄養素に
・ビタミン(有機質) フィトケミカル
・ミネラル(無機質)
があります。
ビタミンとミネラルについては次回以降の学問所通信で扱いたいとおもいます。
今回はたんぱく質、脂質、糖質に絞って、これがどのように消化され、
エネルギーとなるのかを見て行きたいと思います。
【消化】とは、口、胃、小腸の消化活動により、摂取した栄養素が吸収しやすい
小さな分子に分解されることです。
そして主に小腸上皮細胞から【吸収】されて血液に溶け込みます。
そして吸収された栄養素は肝臓に集められ、心臓を経由して全身すみずみの細胞まで送られます。
細胞ではその栄養素を細胞自体の再生産につかいますし、エネルギーとして【代謝】します。
腸で吸収されなかったのこりカスは便として【排泄】されます。
そして各細胞で産生された老廃物は、腎臓でろ過されて尿として排泄されます。
人間が健康的にいきていくためには細胞が新しいものに作り替えられ、
またエネルギーを効率よく使っていく必要があります。
必要なものをきちんと食べなくてはいけません。
タンパク質も、脂質も、糖質も基本的に、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)
が結合してできています。
これらがエネルギーに変わっていくには十分なビタミンや鉄分が必要になってきます。
水や酸素も必要です。 とくにリン酸(P)はエネルギー生成と密接にかかわりがあります。
この点はまたの機会にふれたいと思います。
まずはたんぱく質からです。たんぱく質は消化され吸収されるために
ポリペプチド、オリゴペプチドをへて最終的にアミノ酸に分解されます。
小腸の上皮細胞で吸収され、毛細血管から門脈をへて肝臓に送られます。
アミノ酸はアミノ基転移反応というものによってα-ケト酸とグルタミン酸になります。
※α-ケト酸には、ピルビン酸。オキシロ酢酸、アセチルCoA、α-ケトグルタル酸、スクシニルCoA、フマル酸、アセト酢酸等があります。
α-ケト酸(ピルビン酸など)はミトコンドリア内でアセチルCoAとなって、
TCA回路(クエン酸回路ともゆう)によってエネルギーとして利用されます。
この一連の流れをα-ケト酸の代謝と呼びます。
グルタミン酸は酸化的脱アミノ反応によりα-ケトグルタル酸とアンモニアになります。
α-ケトグルタル酸はアミノ酸とともに再びアミノ基転移反応に使われます。
アンモニアは無毒化され尿素となり体外に排出されます。
またα-ケト酸(ピルビン酸など)は「糖新生」によってグルコースの原料にもなります。
また脂肪酸の原料にもなります。これはのちほど説明します。
脂質はほとんどが中性脂肪(トリアシルグリセロール)です。
中性脂肪は膵液によって脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解されます。
脂肪酸はβ-酸化をへて、アセチルCoAに分解され、TCA回路に入り、エネルギーになります。
またアセチルCoAは肝臓のミトコンドリアにてケトン体となる場合もあります。
ケトン体は血液によって肝臓の外の組織へと運ばれ、エネルギー源として利用されます。
糖質(グルコース)が枯渇しているような絶食時、激しい運動時、
高脂肪食においてもケトン体が生成されます。
アセチルCoAは再度飽和脂肪酸に合成される場合もあります。
脂肪酸がココナッツオイルなどに多く含まれる中鎖脂肪酸の場合は膵液(リパーゼ)によって
グリセロールと中鎖脂肪酸になり、ミセルを形成せずに小腸上皮細胞にて吸収され、
門脈を通じて肝臓に運ばれ、エネルギーとなります。
モノアシルグリセロールは胆汁により一旦ミセルとなり、小腸上皮細胞で吸収されます。
その後また再合成され、リンパ管を通じて、静脈に合流します。
グリセロールは糖新生により、グルコースとなってエネルギーとなります。
余剰に摂取した脂肪は体内に吸収されず、下痢となって体内に排出されます。
とんこつラーメンのスープを多くのんだ日や脂っこい焼肉を食べた翌日に下痢気味になるのは
このせいです(笑)
糖質のエネルギー代謝はとても複雑なのですが、基本的には「解糖系」と「TCA回路」の2つに大きく分かれます。
◆「解糖系」炭水化物は消化されるときに糖質と食物繊維に分かれ、糖質は最終的には単糖のグルコースになり体内に吸収されます。グルコースはみなさんご存知「ブドウ糖」と呼ばれるものです。
またグリコーゲンも解糖系でエネルギーとして代謝されます。グリコーゲンは「貯蔵多糖」として体内にエネルギー候補として貯蔵されたグルコース(α-D-グルコース)が結合しあったものです。
肝臓や骨格で合成されます。
ただし、貯蔵目的にはあまり向かず、食後の一時的な血糖過剰に対応するものです。
貯蔵目的では脂肪が最適で、あまった糖質はインスリンによってせっせと脂肪に変えられます。
吸収されたグルコースは細胞内で「ATP」という分子となりエネルギーとして代謝されます。
酸素がない状態(全力ダッシュなどしているとき)の嫌気条件のもとでもエネルギーを代謝できます。
酸素が十分提供される「好気」条件のもとでは、グルコースからピルビン酸そしてアセチルCoAとなりミトコンドリア内のTCA回路に入ることでエネルギーとして代謝されます。
解糖系のエネルギー代謝だけだと、糖質の存在エネルギーの大半は無駄になります。
解糖系の過程で生じる乳酸などをTCA回路でエネルギーとして最大限活用できます。
「TCA回路」は解糖系で余剰にでたものだけではなく、先にもみてきたように、たんぱく質や脂質などアセチルCoAを生じる場合にも利用されます。
糖質制限食などで食事から摂取するグルコースがなくなり、
さらに肝臓が貯蔵していたグリコーゲンを使い果たすと、肝臓(量は少ないが腎臓も)は
糖以外のものから糖を作り出します。これを糖新生といいます。
食事をしてから数時間後には相当な割合の糖を作り出します。
解糖系ででたピルビン酸や乳酸、TCA回路内の物質、アミノ酸、グリセロールなどが
糖新生によって糖になります。
人間の体は糖質がなくても、他の栄養素から必要な糖質をかなりの量
作り出すことができます。
たんぱく質と脂質、その他栄養を【しっかり】とっていれば、糖質(炭水化物)は体外から摂取する必要はありません。むしろ体内の内臓脂肪を代謝することで、健康的な体になるのです。
現代の人間の食生活では糖質は余剰になって脂肪に変わるだけです。
小麦粉や白米などの炭水化物にももちろんタンパク質や脂質などは含まれています。
問題なのはバランスと量です。
お肉のアミノ酸スコアは100点です。
つまり100とれば必須アミノ酸すべてが100(もしくはそれ以上)摂取できます。
これに対して小麦粉のアミノ酸スコアは35点です。
100とっても必須アミノ酸すべて35しか取れません。
小麦粉にはアミノ酸の素となるタンパク質は100g当たり9gしかありません。
牛肉は100g当たり20gタンパク質が含まれます。
つまりお肉100gと同じアミノ酸を小麦粉で摂取するにはお肉の6倍~7倍も
食べなくてはいけないことになります。
そうなれば糖質過剰になります。
また「糖質が糖質を呼ぶ」という言葉もあります。
たんぱく質や脂質の少ない糖質(炭水化物)中心の食生活では
食事からの満足感が低くなります。
小腹がすいてついつい甘いものを食べたり、
清涼飲料水を飲んだりします。
そしてそれがさらに糖質を欲するように脳を刺激します。
糖質の過剰はメタボリックシンドロームと呼ばれる内臓脂肪型の肥満をまねきます。
最悪な場合には糖尿病になり、痛風になり、心臓病などの生活習慣病を引き起こします。
お肉や卵からしっかりと【たんぱく質】と【脂質】そしてその他の栄養素を補い、
糖質を【控える】ことが現代人に求められる食生活なのです。
学問所通信ではこれまでに三大栄養素と
そのエネルギー代謝を追ってきました。
次回以降は、ビタミンや鉄分などにふれていきます。
これらもお肉の栄養素としてまた人間が健康に生きていくためにもとても必要な栄養素です。