核酸と酵素まで触れるとだいぶ食肉の栄養というものから外れてしまいますが(笑)、
とても大切な話なので簡単にまとめてみました。
たんぱく質が分解されてできるアミノ酸にグルタミン酸というものがありました。
グルタミン酸ナトリウムのほうが皆さんにとっては馴染みが深いかもしれません。
いわゆる旨み成分です。◯の素といううま味調味料として有名ですね(笑)
実は納豆のネバネバもグルタミン酸なんです。
また同じアミノ酸のうまみ調味料としてはグリシンがあります。
古米をたくときに使うと新米のようなおいしさになります。
うま味成分として他に有名なのが、
グアニル酸です。乾燥シイタケに多く含まれています。
またイノシン酸というのも耳にしたことがあるのではないでしょうか。
かつお節が有名ですね。
実はとんこつラーメンのとんこつスープの旨みもこのイノシン酸が関係しています。
これらのグアニル酸とイノシン酸というのは核酸系うま味成分と呼ばれています。
今回のテーマである核酸と関係があります。
第15回 食肉の栄養 -たんぱく質 その2編->>
の通信の中でDNAやRNAというものが登場しました。
おさらいになりますが、DNAはデオキシリボ核酸(deoxyribo nucleic acid)の略です。
よく私たちが遺伝子と呼ぶものです。細胞の核の中に収納されています。
人間の生命維持に必要なたんぱく質の設計図が入っています。
RNAはリボ核酸(ribonucleic acid)の略です。こちらはDNAに格納されているたんぱく質の設計図を読み取り、必要なアミノ酸を集めてきて、たんぱく質を作る役目をしています。
DNAにもRNAにもnucleic acidという言葉が入っています。日本語にすると核酸ですね。
さらにいうとどちらにも
ribo nucleic acid
という言葉があります。
「DNA」や「RNA」は「リボヌクレオチド」というものが元になっています。
「糖(五炭糖)」と「塩基」が結合したものを「ヌクレオシド」と呼びます。
そのヌクレオシドにリン酸が結合したものが、「ヌクレオチド」となります。
DNAやRNAのヌクレオチドはD-リボースという五炭糖が材料となるので「リボヌクレオチド」と
呼ばれます。
※下記リボヌクレオチドの図の真ん中の五角形の部分が糖です。
RNAはこのリボヌクレオチドが元になりますが、DNAはデオキシリボヌクレオチドが元になります。
「デオキシ」とは「de-oxygen」という意味で酸素(O)を取るという意味です。
上図からもわかように、リボヌクレオチドの糖の部分の右下のOHのOが取れる(デオキシ)ことで
デオキシリボヌクレオチドになります。
リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの性質を決める部分がこの塩基の部分になります。
前回でてきたATPというエネルギー通過も実はこのリボヌクレオチドなのです。
右側の塩基というものには大きく2つあります。
プリン塩基は六角形と五角形がくっついた形をしています。
塩基の名称としてはアデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチンとなります。
プリン?と聞くと多くの方が甘いプリンを思い浮かべるかもしれません。
ただ一部の方には痛風を引き起こす「プリン体」をイメージさせると思います。
残念ながらそのプリン体です(笑)
ピリミジン塩基は六角形一つです。
そしてこれが、ヌクレオチドになると名称が若干変わります。
アデニンを塩基にもつものは、アデニル酸です。ヌクレオシドはアデノシンとなります。
ATPは「アデノシン三リン酸」と読んでましたね。
この表はATPではなくAMPです。
Pが一つだけついたものになります。このときはアデニル酸と呼びます。
そして酸素がひとつとれたデオキシリボヌクレオチドはデオキシアデニル酸と呼ばれます。
塩基がヒポキサンチンのものはリボヌクレオチドになるとイノシン酸となり、
もとの名称と大きく変わってますね。イノシン酸は冒頭で「核酸系調味料」として登場しました。
塩基がチミンのもののデオキシリボヌクレオチドだけはデオキシ◯◯酸と呼ばないのです。
そのかわりリボヌクレオチドをリボ◯◯酸と呼んでいます。
これまで何度もでてきたTCA回路ではエネルギー生産に必要となる補酵素に
NAD+やFADが登場しました。
これらも実はヌクレオチドです。
NAD+は「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」です。
ニコチンアミドはビタミンのところでもふれたナイアシンのことです。
アデニンジヌクレオチドとなっているので、リン酸基が2つのADPがくっついています。
FADは「フラビンアデニンジヌクレオチド」はアデニンジヌクレオチドにリボフラビンが
結合してます。リボフラビンは「ビタミンB2」です。
エネルギー代謝にナイアシンやビタミンB2などの水溶性ビタミンが深く関与していることが
わかります。
CoA(補酵素A)はヌクレオチド誘導体として代謝で中心的な役割を担います。
※細胞内のヌクレオチドは通常RNAやDNAのポリマー型として存在していますが、
動きまわっているものもあります。これを誘導体といいます。
DNAはデオキシリボヌクレオチドが連なってできています。
そしてその連なりが二本、螺旋状に絡み合っています。二本を螺旋状につなげているのが塩基部分です。 つながりには決まりがあるのですが、これ以上は今回は割愛します。
RNAはリボヌクレオチドの鎖が一本のみです。
結合の仕方には規則があるのですが、今回は割愛します。
前回も書きましたが、RNAには三種類あります。
RNAは必要とするとあるたんぱく質の設計図にもとづいて必要なアミノ酸を運びこんで工場で
たんぱく質を作って必要な臓器にたんぱく質を提供してます。
核酸は人間以外の細胞にももちろんあります。
ただ食事として摂取した核酸がそのまま体内で利用されるわけではありません。
タンパク質や糖質から体内で合成されます。
塩基がプリン塩基かピリミジン塩基かでヌクレオチドの作られ方は異なります。
リボヌクレオチドからデオキシリボヌクレオチドが作られる過程(デオキシ化)も
プリン塩基かピリミジン塩基かで変わってきます。
今回この説明は割愛します。
さまざまな酵素によってヌクレオチドが作られ、
そしてまたさまざまな酵素の力によってDNAやRNAが作られていきます。
重要なのは核酸が異化代謝されるときです。
異化代謝とは、ある物質が分解されて体外に捨てれられることをいいます。
プリン塩基をもつヌクレオチドは最終的に「尿酸」になり、尿といっしょに体外に排出されます。
尿酸値が高いひとは痛風の危険性もありますね。「プリン体0」なんて食品もあるくらいです。
ただ尿酸には「活性酸素を消去する作用」もあるようです。
活性酸素は物質を酸化させやすく、細胞や血管をもろくしてしまいます。
尿酸濃度の高いひとは活性酸素による血管の老化を遅くする作用があるとされています。
良いのか悪いのか難しいですね。
ではなぜ尿酸値が高いと痛風が起きるのでしょうか。
この働きが弱いと、尿酸がどんどん作られ、体内に蓄積し結晶化して、関節にたまり、
イタズラをするのです。
ただ尿酸値が高く高尿酸血症となったひとでも痛風を発症しないケースも多くあるようです。
痛風発作の引き金となる要因はすべてわかっているのではないですが、アルコールの痛飲や激しい運動で脱水症状になることで尿酸値が乱高下し、その翌日に痛風になるケースが多いとされています。
また尿酸値を下げるような薬も投薬のタイミングでは痛風の引き金となるようです。
HGPRTが正常のひとでももちろん痛風を起こします。
痛風は男性に多いのですが、女性は女性ホルモンによって尿酸を体外に排出することが
促進されているからとされています。
このHGPRTという酵素はたんぱく質なのですが、遺伝的にHGPRTを作ることができず、
尿酸が増えすぎるひともいます。この場合こどもの頃から薬がないと痛風に苦しむことになります。
またLesch-Nyhan症候群という深刻な神経疾患を引き起こします。
HGPRTの設計図はX染色体に関係があるので、X染色体が一つしかない男性特有の症状です。
ピリミジン基をもつヌクレオチドはこの合成がうまくできないひとがいます。
その場合はピリミジンヌクレオチドが合成される途中の物質であるオロト酸(グルタミン酸から合成)から酵素がはたらかずヌクレオチドになることができず、オロト酸がたまってしまい、「オロト酸尿症」となります。あまり聞かない症状ですね。
この酵素を持たない赤ちゃんは知能の遅れや貧血を発症したりします。
今回もそうですが、これまでにも「酵素」という言葉がでてきました。
エネルギーを生産するためにも「酵素」や「補酵素」といものの働きが必要です。
物質をその他の物質に化学変化させたり、物質同士がくっついて新たな物質になるときには
この「酵素」とうものの働きが必要です。食べ物の消化も「酵素」の働きです。
「酵素◯◯」というのを聞いたことがあると思います。
酵素水が有名ですね。
抗酸化力があって若返るとか、美肌効果があるだとかいわれて人気のようです。
でも結論からゆうとその他のサプリも含めて、酵素を体外から摂取しても、
体内で酵素として働くわけではありません。
酵素の正体はたんぱく質です。摂取すればアミノ酸まで分解されます。
まあアミノ酸を摂取したという程度でしょう。
酵素を飲みやすいものにするために、甘くしたり、余計なものを加えたりしているので、
逆にマイナス面のほうが大きいかもしれません。
酵素には活性中心というものがあり、この活性中心に特定の基質(結合部位になる部分)がキャッチされることで、その物質に変化を与えます。酵素によって変化させられた物質を生成物と呼びます。
その際には補酵素というものが利用される場合もあります。
ビタミンのところでも補酵素が登場しましたね。
体内での化学反応は水の中で泳いでいる物質たちがぶつかり合って起きています。
細胞内を泳ぎながら、自分の大好きな基質を酵素が見つけて、変化させるのです。
酵素には、物質を酸化還元する酸化還元酵素や、ある物質の一部を別の物質に移す転移酵素などが
あります。役割によって名前の付け方がきまっています。
酸化還元酵素は「オキシドレダクターゼ」という名前を付けます。
その前にその酵素が大好きな物質名をつけて名称がきまります。
酵素が発見される前にすでに名前がついていて有名になってしまったものには例外もあります。
これらの酵素が化学変化のさまざまな場面で働くことで、生命の維持をしてくれているのです。
可逆反応とは、ある酵素が、特定の物質を他の物質に変化させ、またその酵素が、
変化させた物質からもとの物質へ変化させることができることをいいます。
酵素の働きは生命の維持にとってとても大切ですが、酵素のはたらきが良すぎてある物質(生成物)が増える場合には阻害剤といものがその酵素の働きを抑えることもあります。
阻害剤はその生成物そのものもありますし、その酵素が大好きな基質に構造が似ている
「そっくりさん」の場合もあります。
特定の生成物が増えすぎると、生成物が基質にくっついたまま酵素を離れず、
酵素の働きを邪魔します。
またそっくりさんが増えれば、酵素の活性中心にそっくりさんが居座り、
本来の生成物を作り出すことを抑制します。
◯◯阻害剤という薬がありますよね。
あれはある酵素の働きを抑えることで、その生成物による体への悪影響を抑えるものです。
最後に繰り返しますが、酵素といってもかなりの種類があります。
それを一緒くたにした酵素サプリをとっても、
それがある人にとって本当に必要な酵素なのか不明ですよね。
しかも酵素を体外から摂取しても、分解されてアミノ酸になるだけです。一時的な効果はあるかもしれませんが、大金をつぎ込んで健康を求めるのはいかがなものかと感じます。
次回は「ミネラル」についてです。
また「食品添加物」についてもみていきたいと思います。