糖質は体にもっとも必要な栄養素であるという思い込みから、
糖質は必須栄養素だと勘違いしている方も多くいます。
また三大栄養素として多量の摂取が必要であるともいわれています。
タンパク質が分解されてできるアミノ酸、中性脂肪が分解されてできる脂肪酸の一部には、人間が体内で合成できないため、かならず外部から摂取しなければいけない必須栄養素があります。
必須アミノ酸でいえば、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン
必須脂肪酸でいえば、リノール酸、α-リノレン酸
等です。
実は「必須糖質」というものは、どこをひっくり返してもないわけです。
標準的な体重のひとで、血液中のグルコースはわずか4gです。
グルコースは体内で合成されて利用されるので、必要な量が4gというわけではありません。
グルコースしかエネルギーにできない細胞もあります。
肝臓には「糖新生」という仕組みがあり、脂肪(グリセロール)などから適切な量のグルコースを作り出し、エネルギーとして利用します。これが十分な量のグルコースを供給してくれるのです。
食事から摂取する必要はまったくないのです。
なので必須栄養素でもなく、また三大栄養素としてとらえる必要もないのです。
過剰に摂取した糖質は体内ではグリコーゲンとして蓄えられます。
グリコーゲンはグルコースが結合してできているものです。
必要に応じてグリコーゲンをグルコースに変えてエネルギーとして利用します。
人間がグリコーゲンを蓄えるときには、水分もいっしょに蓄えます。
グリコーゲン1gに水3gが結合します。
グリコーゲンは肝臓に100g、筋肉に300g、合計400g程度貯蔵できます。
合計で1.6kgのグリコーゲンと水を蓄えています。
これがむくみの原因です。
糖質制限に限らず、食事制限や断食などでは、2~3kgの体重はすぐに減ります。
これはグリコーゲンがなくなるとともに、余分な水分が対外へ排出されるためです。
食事を元に戻せば、すぐに体重も戻ります。
これはやせたとはいえません。
これを維持できてはじめて、減量できたといえます。
余談ですが、塩分についても、水分が多いと腎臓は排出するべき塩分を再利用
して濃度を維持しようとします。
インスリンには腎尿細管においてナトリウム再吸収促進の作用があるのです。
だから、通常の食事においては「減塩」しないと塩分過多となるんですね。
糖質制限食では体内の水分量が適正に維持されるので、塩分は尿として
排出されます。適度に塩分補充をしないといけませんね。
糖質を多く含む穀物などの炭水化物は脂質と比べると低カロリーです。
このため、健康になるためにカロリーを抑えたいひとは、炭水化物中心の食事となってしまいます。
脂質は徹底的に嫌われるわけです。
だから低カロリー低脂肪の食品がもてはやされているんですね。
炭水化物を多く含む穀物・イモ類などは、基本的にたんぱく質や脂質を多く含む肉や卵、魚に比べると様々な栄養素において乏しい、そして吸収率が悪いという点があります。
アミノ酸スコアでいうと
となります。
炭水化物中心の食生活でお腹を満たそうとすると、多くの栄養素が足りません。
栄養素をきちんととろうと思えば、さらに食べるしかありません。
そうすればインスリンは過剰分泌となり、肥満や糖尿病などへの生活習慣病へつながっていきます。
我慢をすれば、栄養失調になります。日々からだの不調を唱え、薬やサプリ、栄養ドリンクに頼った生活を送ることになります。
実は1960年代までは、糖尿病治療でも、肉を食って治すという糖質制限食に似たダイエットが普通に唱えられていたのです。それが衰退したのは「脂肪による心臓病の危険」という話がでてきたためです。
アンセル・キーズという科学者が「飽和脂肪酸は心臓病の原因となる」
と主張したことに端を発します。
ここから低脂肪ダイエットの大流行が起きます。
実はキーズは研究結果の操作をしていたことが判明します。
にもかかわらず低脂肪ダイエットが間違いであるということは、暗闇に葬られたのです。
その首謀者は食品加工会社です。
低脂肪食品では、脂肪を減らすかわりに、コストも安くおいしく、かつ中毒性のある「糖」を食品に大量に使用することができます。
食品会社は大きな利益を得ることになりました。
そのおかげ(?)で生活習慣病はどんどん蔓延し、
今度は医薬品業界も大きな利益を生むようになりました。
みんなが健康的になるととても困るのです(笑)
低脂肪ダイエットやカロリー制限では、最初の数週間は体重が落ちても、そんな食生活は長続きせず、結局、もとの体重(もしくはそれ以上)に戻ってしまいます。
ほとんどの場合で栄養失調により代謝が落ちてしまうので、より悲惨な結果が待ち受けています。
低脂肪食品によって減らされてしまった脂肪やコレステロールは体に元気をもたらす副腎皮質ホルモン(コルチゾール)や性ホルモンの原料です。もちろん、細胞など私たちの体を構築するためにタンパク質と同じく重要な栄養素です。
これらを大幅に減らせば、元気がなくなり、性欲も減ります。
ストレスに対応する力も弱くなります。
糖質はできる限り制限して、タンパク質と脂質を中心とした食生活こそが、健康的に生きるすべなのです。肉・卵は、お米や小麦そして野菜よりもあらゆる栄養素の面で優れています。
疲れたり、体調がおもわしくないとき、栄養ドリンクや甘いものを食べる方も多いと思います。
また病院に点滴をしにいって、なんとか毎日をしのいでいる方もいます。
栄養ドリンクや甘いもの、そして点滴にも多く含まれているのが「グルコース」です。
グルコースを摂取すれば、一時的に急激に血糖値があがり、体を奮い立たせることができます。
しかし多くの場合で、それは長続きしません。すぐに疲れてしまいます。
低血糖になりまた甘いものを欲します。
私は一時期、すべての項目が当てはまりました。
思い当たることが複数ある場合には、それは「糖質過剰」により体調が優れないことを示しているかもしれません。
血糖値の乱降下により、過食になったり、不眠症になったり、そして疲れやすくなったりします。
ストレスに対応する力が弱くなり、イライラします。仕事にも集中できません。
このような症状があると、病院に点滴をしてもらったり、薬をのんだり、栄養ドリンク・サプリに頼らなくてはいけなくなります。
そしてそれは一時的な症状の緩和に過ぎません。
糖質を制限することでのみ、これらの症状が緩和できます。
糖質の過剰摂取は脂肪を蓄えるだけでなく、さまざまな悪影響を体に及ぼします。
血糖値が急激に上昇する(グルコーススパイク)やインスリン抵抗性があり血糖値が高い状態が続けば、血管を傷つけることになります。
そこにプラークができて血流が悪くなっていきます。
そうなると動脈硬化や心筋梗塞、脳血管疾患をもたらします。
またグルコースはタンパク質と結び付く力が強く、さまざまな臓器を糖化してしまいます。
腎臓病などの疾病に繋がります。
アルツハイマーなどの認知症は「脳の糖尿病」と言われています。
がん細胞はグルコースをエネルギーにして肥大して、転移していくようです。
まさに「細胞の糖尿病」です。
糖質の過剰摂取は肥満や糖尿病だけでなく、さまざまな疾病の原因となるのです。
人間をはじめとする哺乳類には「ホメオスタシス」(=恒常性)というものがあります。
寒ければ、体温を上げて維持します。ストレスに向き合えば、血糖値を上げて、それに対処しようとします。血糖値があがれば、インスリンを分泌して、下げようとします。
この仕組みには自律神経系の交感神経と副交感神経が深くかかわっています。
ストレスを受けると交感神経が緊張します。 そして副腎皮質からのホルモン分泌を増やし、ストレスから防御しようとする反応が起きます。やがて、今度は落ち着こうと副交感神経が刺激されることになります。
糖質を過剰に摂取したときは副交感神経が反応し、インスリンを分泌を促します。 高血糖から低血糖になり、今度は交感神経が緊張します。
ストレスが多い現代の生活や糖質中心の食生活で、交感神経の過度の緊張や副交感神経の過剰反応が繰り返されると、神経が過敏になり、だるくて終始やる気が起きない状態になり、塞ぎ込む気分にもなります。またストレスにも対する力も弱くなっていきます。
いいかえれば体調が悪いときには自律神経系の過剰反応が起きているともいえます。
日常的に起きる痛み、腫れ、発熱、咳、下痢、吐き気なども、この副交感神経の過剰反応が原因と考えられます。
自律神経系は基本的に人間の意思でコントロールできないのですが、糖質をおさえた食事で血糖値の乱降下をふせぐだけでも、交感神経と副交感神経の過剰反応を抑えることができます。
体調が良く健康なときは、交感神経と副交感神経との上がり下がりが極端にはなりません。
自律神経系が安定していれば、おだやかでストレスにも強い精神状態になります。
この正反対が自律神経失調症と呼ばれるものです。
「ホメオスタシスというものを意識して、なるべく自律神経系を刺激しない生活を送るように心がける。そのためには耐ストレス力をつけ、糖質をなるべく制限する食生活を送る」
必要があります。
次回の学問所通信では、ここまでの話を整理して、「新しい栄養学」とそれにふさわしい「ケトジェニックダイエット」とはなにかを考えていきたいと思います。