鹿児島放牧黒豚?え、なにが違うの?と思われるかもしれません。
今回の学問所通信では「鹿児島放牧黒豚」って何が違うの?の疑問にお答えしたいと思います。
黒豚ってなんなのでしょうか。
スーパーなどで売ってるブランドポークとは何が違うのでしょうか
略語で「LWD」と書きます。
みなさんがよく「豚」と想像する色の白い(ピンク?)の豚肉です。
Lはランドレース種
Wは大ヨークシャー種
Dはデュロック種
LのメスにWのオスを掛け合わせて生まれた子豚がLWとなります。
このLWのメスにDのオスを掛け合わせたものがLWDです。
当店の取扱いしている「小手川豚トンポーク」はこの三元交雑種です。
こちらの動画ブログもご覧ください。
http://298now.jp/archives/370
この掛け合わせの違いでWLDになったり、違う雑種になったりします。
農場によって特徴のある掛け合わせを考えているところもあります。
鹿児島黒豚の中でも、鹿児島在来の黒豚を主体にイギリスバークシャー種と掛け合わせて改良された黒豚は肉質が最高と言われています。
鹿児島県外には絶対ださない門外不出の血統です。
一般的な黒豚の特徴に「六白」といわれるものがあります。
体全体は黒毛ですが、鼻・しっぽ・足4本の計6か所が白いという特徴からそう呼ばれています。
(画像の鹿児島放牧黒豚は泥遊びで茶色くなってますが、これも六白です)
そして、鹿児島放牧黒豚の最大の特徴が「しゃくれ」です。
写真からもおわかりになると思いますが、鼻と口がみごとにしゃくれています。 鹿児島在来の黒豚の特徴です。
この3つの違いは豚肉のコストに大きくかかわってきます。もちろん黒豚のほうがコストがかかり、
値段も高くなってしまいます。
鹿児島の大自然の中で、放し飼いされています。
いいかえれば、一般的な豚は「放牧されていない」ということです。
スーパーや百貨店で売っている豚肉はどのように育てられているか、みなさんご存知ですか?
現在の養豚を風刺するのにこんな言葉があります。
「大自然の中にある
通気性のよい豚舎で
ストレスもなく
のびのびと育っています。」
多くの方がこんな言葉を聞くと、「ああ、健康的に育っているんだなぁ」
と感じるかもしれません。
それは多くの場合で「間違い」です。
SPF豚であれ、ブランドポークであれ、百貨店や大手スーパーで
途切れることもなく売られている豚肉も例外ではありません。
養豚農家は大規模化しています。
多くは人里離れた山奥にあります(大自然の中にある)。
そしてウインドレス豚舎といった外気からは完全に遮断された豚舎の中で育てられています。
外との接触は通風孔を通してのみです(通気性のよい豚舎)。
豚は一生お日様を見ることはありませんし、人の目に触れることもありません。
えさは絶え間なくパイプを通して目の前まで運ばれてきます(ストレスもなくのびのびと育っています)。
それでも、豚は病気になり、近年、抗生物質等の投薬は増える一方です。
こうして育った豚は「○○ポーク」といったブランド豚で売られることが多く、
やわらかい、臭みがない、その割に比較的安いと評判です。
大自然の中にあるけども、外気や日光から遮断され、中でなにが行われてるかわからないカプセルホテルがある。
と想像するほうが、いまの大規模養豚の姿に近いかもしれません。
ただそのホテルの中で何が行われているかは、近づくと察することはできます。
かなりの臭気と大量のハエに囲まれてしまうからです。
そのホテルの中に実は1万頭もの豚たちが生活していたりします。
脂身は白く甘く、赤身はきめ細やかにおいしく育ちます。
鹿児島放牧黒豚を育てている沖田黒豚牧場さんでは飼料を自分たちで配合します。
飼料は自然発酵しており、黒豚たちも食べやすい感じになっています。
飼料をさわると温かいんですよ。
流通しているほとんどの豚が「トウモロコシ」を主体とした飼料で育てられています。
トウモロコシ主体の豚は成長が早く、すぐに出荷できます。
その代わり病気になりやすく、抗生物質やワクチンなどを投与します。
抗生物質は成長促進目的でも利用されている場合があります。
鹿児島放牧黒豚は、放牧されたのちは抗生物質・ワクチンの投与はありません。
それでも(だからこそ?)健康に育っていくのです。
それは黒豚たちが食べるものに秘密があるからなのです。
鹿児島放牧黒豚の黒豚たちは、放牧中に「土」を食べるんですね。
みなさんわかりました?(゚Д゚;)ですよね。
子豚期こそ、豚舎の中で育ちますが、肥育期になると黒豚たちは放牧地に放たれます。
のんびり飼料を食べながら、その合間に、放牧地にある土を食べます。
放牧地の土壌はミネラル豊富です。
そうしたミネラルも十分に吸収しながら、育っていきます。
そして何より大切なのが、「土を食べることで病気を治す」ことです。土を食べることによって、腸内の寄生虫などが死滅します。豚は下痢することもなく、投薬もなく、すくすくと育っていきます。
画像にヒントがありますよ。小さくてわからない?(笑)
非常に誤解が多い豚に「SPF豚」があります。
SPF豚なら抗生物質やワクチンを投与していないと思っている方も多くいらっしゃいます。
そうではありません。
特定の病気 オーエスキー病、、マイコプラズマ肺炎、豚赤痢、萎縮性鼻炎、トキソプラズマ病といった5つの病気の原因となる菌を保有していないということです。
生まれから後天的に発症する病気やその予防のためには、抗生物質やワクチンを
処方するよりほかありません。
養豚農家の間では、投薬量も普通の豚と変わらなくなってきているという話もあります。
ましてや「無菌豚」ではなく、生食できるわけでは絶対にありません。
豚の種類としてもなにか優れているわけではありません。
専門家からしてみれば、SPF豚も普通の豚です。
野生の鹿たちは放牧地に自生している草などを食べます。また黒豚たちの糞もたべます。
そうして、また自分たちの糞を放牧地ですることで、栄養素を放牧地に戻していくのです。
黒豚たちは、まわりの草木の栄養素も間接的に取り込んでいます。
まさに循環型農業といえますね。
いま養豚農家は大規模化しています。それは病気リスクとつねに背中合わせだということを意味します。昨今の豚口蹄疫、PED(下痢症)などの蔓延は、抗生物質やワクチンなどを投薬しても、防ぐことができませんでした。にもかかわらず投薬量は増える一方です。 また糞尿による汚染も深刻です。
放牧されて、栄養たっぷりの土をたべている放牧黒豚たちは、自分たちの力で病気を治していきます。
投薬はする必要がありません。ミネラル豊富な土を食べることで、黒豚たちも栄養価が高く育ちます。
また糞尿は自然環境が処理をしてくれて、草木や鹿のえさとなります。鹿の糞がまた大地に栄養を戻していきます。
豚肉価格の安定という観点からは、大規模養豚を否定してしまうことはできません。
ですが、本当に健康的に、栄養価たっぷりに豚肉を作っていくという放牧形式の養豚も守っていかなければなりませんね。