九州食肉学問所は
一般社団法人日本糖質制限医療推進協会代表理事 江部康二の賛助団体として「糖質制限食」の普及を支援しております。
「糖質制限食」とは、1999年より(一財)高雄病院(京都市右京区)において導入されている糖尿病の食事療法のことを指します。
従来は糖尿病をはじめとする生活習慣病の食事療法として広まりました。
いまではその健康効果から多くの方が日常の食事として取り組んでいます。
「肉、卵、チーズ」がキャッチフレーズのMEC(メック)食
「ケトン体」に重点を置いたケトジェニックダイエット なども「糖質制限」を軸にした食事法だといえます。
「糖質制限」および「糖質制限食」についてはブログ記事もご参考ください。
「MEC食」についてはこちらをご参考ください。
ケトジェニックダイエットについてはこちらをご参考ください。
私たちヒトを構成する成分を見てみましょう。
体重や身長によって違いはでますが、平均的に、水分が60%、タンパク質が18%、脂肪が16%、糖質が1%、その他5%という構成になっています。
その他にはビタミンやミネラルなどが含まれます。
三大栄養素というものをご存知だと思います。
糖質、タンパク質、脂質ですね。
ですが、糖質はその他成分に比べれば多いものの、ヒトの体の1%程度しかありません。
次にグラフ1-2を見て下さい。
私たちが常日ごろ食べる小麦の栄養構成です。
精製度や種類により違いはでますが、小麦100gあたりには、水分14%、タンパク質8%、脂肪1.7%、糖質73%、その他(食物繊維含む)3%程度となります。
次にお肉の栄養成分構成を見てみます
牛の畜種、飼料、部位によって違いはでますが、平均的に、水分が62%、タンパク質が19%、脂肪が18%、糖質が1%、その他5%となっています。
これらを表1にまとめてみました。
参考までにお米を追加しています。
表1
ヒト | 小麦(薄力粉) | 精米 | 牛肉 | |
---|---|---|---|---|
水分 | 60.0% | 14.0% | 16.0% | 62.0% |
タンパク質 | 18.0% | 8.0% | 7.0% | 19.0% |
脂肪 | 16.0% | 1.7% | 2.0% | 18.0% |
糖質 | 1.0% | 73.0% | 70.0% | 0.5% |
その他 | 5.0% | 3.0% | 3.0% | 1.0% |
これまでのグラフと表1でわかるように、ヒトの成分と、小麦や精米などの植物の成分にはその構成に大きな違いがあります。
ヒトの成分と牛肉をはじめとするお肉の成分の構成はそっくりです。
ヒトも、ヒトと同じ哺乳類の肉も糖質制限されて構成されていますね。
ヒトが健康的に生きていくために、効率よく栄養をとるには、肉(そして卵)がもっともよいということを示唆しています。
これはどうゆう意味でしょうか。
ヒトであれ動物であれ、私たちは食事をすることで、日々活動をしています。
食事をしなければ、やがて死んでしまいます。
肉や野菜、病原菌、ウイルスであれなんであれ、口から入ったものはすべて私たちにとっては「異物」として消化管に受け入れられます。
よくびっくりされるのですが、胃や腸の中といった消化管は、ヒトにとって実は「身体の外側」であるということです。
この身体の外側から、内部に食べたものを取り込むために、消化・吸収というプロセスが行われます。
異物をバラバラに分解(消化)し、その中からヒトにとって有益なものを取り込む(吸収)のです。
それでは、分解されてバラバラになった状態となどんな状態でしょうか。
糖質は、スクロース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)、ガラクトース(乳糖)まで分解されます。
タンパク質はアミノ酸にまで分解されます。
脂肪はグリセロールと脂質に分解されます。
消化プロセスによってバラバラにされたグルコースやアミノ酸はようやく腸で吸収されます。 そこから血液で全身に運ばれ、利用されます。
脂質は糖質やタンパク質と違い、小腸で吸収されると、リンパ管にそって全身をめぐります。
脂肪を食べたからといって、血液中の中性脂肪値を上げるわけではないのです。
血管やリンパ管で運ばれた栄養素は、全身の細胞で利用されることになります。
小腸にて吸収された栄養素(糖質、タンパク質、脂質、その他ミネラルやビタミン)は体の成長や維持、エネルギー生成のために利用されます。
この栄養素の中でひとつ困ったものがあります。
グルコース、フルクトースなどの糖質です。
砂糖やデンプンは消化されるとグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)にまで分解され、吸収されます。
私たちの血液にはある一定量のグルコースが含まれています(平均的なヒトで4g~5g)。
これを血糖値といいます。
健康的なヒトで血糖値はだいたい80~100mg/dL程度となります。
お米や小麦に加えて甘いおかず、ジュースなどを同時にとると、一回の食事量で糖質量が100gを軽くオーバーしています。
血液中にあった糖質量の何倍もの糖質が一時期に一気に流れ込んでくることになります。
糖質の多い食事をすると、血糖値が急上昇してしまいます。
これを「血糖値スパイク」と呼びます。
健康なヒトで1gの糖質が1mg/dLの血糖値を上昇させます。
糖尿病なヒトでは1gの糖質3mg/dL上昇するとされています。
単純に考えると100gの糖質量の食事をすると、血糖値は180~200mg/dl、糖尿人では300mg/dlオーバーとなってしまいます。
一日になんども血糖値スパイクがあったり、高血糖状態はこれが長引くと、とても危険です。
高血糖は【酸化ストレス】をもたらします。
酸化ストレスは血管を傷つけます。「動脈硬化」、「老化」、「癌」、「アルツハイマー」の様々な疾病の原因とされています。
もちろん、糖尿病、心疾患などの生活習慣病も引き起こします。
では、この血糖値を平均程度に保つようにコントロールするためにはどうしたらよいのでしょうか。
それには大きく2つの方法があります。
ひとつめの方法は自律的な方法です。
ヒトには「ホメオスタシス(恒常性の維持」という機能が備わっています。
脳の視床下部は全身状態をチェックし、ホルモンバランスを調整し、最適な状態に戻そうとします。
血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
これは自律神経系が作用して、インスリンの分泌を促します。インスリンは血糖値を下げます。こうしてホメオスタシス(恒常性)を保とうとするのです(図を参照)
インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。
インスリンは余分なグルコースを細胞に取り込んで、グリコーゲンや脂肪に変えて蓄えるように作用します。
健康なヒトが糖尿病のヒトより、同じものを食べても血糖値が上がりにくいのはインスリンの分泌能力とインスリン感受性が高いことによります。
しかしながらインスリンをせっせと過剰に分泌をさせるような食事は、やがてインスリン分泌能力を衰えさせ、また細胞でグルコースの取込みが難しくなる【インスリン抵抗性】を生じます。
これが慢性化すると、高血糖と高インスリン状態が持続し、肥満や生活習慣病などの症状につながるのです。
インスリンは別名【太るホルモン】と呼ばれています。
一型糖尿病は、このインスリンが分泌されなくなることで起こります。
そうなると、何を食べてもまったく太れなくなるのです。
糖尿病患者の治療の一つとして「インスリン注射」があります。
インスリン分泌能力が弱った患者が、血糖値を下げるために、人工ホルモンを注射するのです。
自律的なインスリン分泌であれ、インスリン注射であれ、問題は「低血糖を引き起こしやすい」ということです。
インスリンが作用して高血糖から低血糖になる段階で、眠たくなったり、イライラしたりといった症状が出やすくなります。
こうした状況になると今度は血糖値を上げるホルモンがでます。
【グルカゴン】、【アドレナリン】や【コルチゾール】と呼ばれるものです。
高血糖になると低血糖になり、そこからまた高血糖になったりと、血糖値の起伏が激しくなります。
これはホメオスタシスを取り戻すために、自律神経系(交感神経および副交感神経)が大きく揺さぶられているためです。
インスリンの過剰分泌は副交感神経が過敏になっているためです。
その後のアドレナリンやコルチゾールの分泌は、交感神経が過敏になっていることに関係しています。
こうした自律神経系の大きな変動は、さまざまな不調をもたらす可能性を高めてしまいます。
それは精神疾患にも影響してきます
この背後には自律神経系の乱れがあります。
それは精神疾患にも影響してきます。
米や小麦、そして芋、そしてく栄養ドリンクやスポーツドリンクには多くの糖質が含まれています。
こうした食品は、肉や卵と比較して、ヒトにとっては「異物中の異物」といえるかもしれません。
この「異物中の異物」を体内に取り込んで利用するためには、血糖値を急激にあげ、それを下げるためにインスリンを分泌するというプロセスが必要になってきます。
肉に多く含まれるタンパク質や脂質ではこうはなりません。もちろんタンパク質の摂取でもインスリンは分泌されます。
ですが、血糖値を直接的に上げることによってそうなるのではありせん。
脂質は血糖値を上げることはありません。
こうしたヒトの成分と食事からの成分を近づけることで高血糖を避け、過剰なインスリンを避ける食事が「糖質制限食」です。
前述の通り、ホメオスタシスによって、健康なヒトではある程度の血糖値の上下はある程度コントロールできています。
しかしながら、その裏側で、自律神経系の動揺とホルモンの分泌は続いていることになります。 糖質摂取が行き過ぎていれば、いずれ問題を引き起こします。
小麦やお米を主食とした食事。それに芋などのデンプン質な食材を加えたおかずがメインになると、常に高血糖のリスクにさらされます。
ここにストレスなどによるアドレナリンやコルチゾールによる血糖値の上昇もあると、一日中高血糖が持続している可能性もあります。
高血糖になるのを避け、自律神経系を揺さぶらずにホメオスタシスを維持する食事。
そして生活習慣病の予防にもつながる食事。
それが「糖質制限食」です。
小麦やお米、そしてイモ類など度違い、肉や魚、卵中心の食生活では、食事から摂取する糖質がほとんどありません。
ヒトにもっとも近い栄養をもつ食材ということです。
こうした食品を食べると、血糖値も低位に保たれるため、インスリンの追加分泌が少ないのです。
ヒトにとって最も必要な栄養素であるタンパク質と脂質がきちんと取れます。
もちろんビタミンやミネラルもです。
そもそも血糖値が上がらないので、低血糖になりにくい食事です。自律神経系は非常に落ち着いた感じになります。
つまり、私たちが生きていく上で必要な栄養素を効率よく吸収でき、かつ負担がとても少ないのです。
そしてあらゆる諸症状が改善するといわれています。
という声を多く聞きます。
これ以外にも、現在では癌治療における食事療法としての注目も集めています。