糖質制限食について

2) 現代栄養学の問題点

私たちのほとんどは「糖質制限食」というものを習ったことがありません。
いや、ほとんどの人は「栄養学」というものすらきちんと教わったことがないのではないでしょうか。

糖質制限するとお米やパンを食べれなくなると感じると、それだけで拒絶反応を起こすひとがいます。

それは仕方のないことかもしれません。

主食は米であると刷り込まれてきました。学校給食ではパンや麺といった小麦を使った食品がほとんどです。
外食すれば、パスタやラーメン、ご飯おかわり自由の定食屋さんに、うどん屋、ハンバーガーショップ。
見渡せば「糖質だらけ」です。

厚生労働省は「日本人の栄養摂取基準」というものを5年ごとに発表します。

そこではバランスの良い食事として糖質(+食物繊維)量60%、タンパク質20%、脂質20%が推奨されています。

カロリー控えめが健康によいという視点から糖質の割合が多くなっています。

お米やパンが主食として尊重されるわけです。

ですが、この割合には現在の栄養学における致命的な間違いが潜んでいます。

現在の栄養学では、

1.「脳のエネルギーはグルコース(糖質)のみである」

2.「糖質は人間の体にもっとも必要なものである」

となっています。これらは明らかに間違いです。

脳のは脂肪が分解された【ケトン体】というものも利用できます。
いえ、むしろケトン体のほうが本来のエネルギーといえます。
実際に寝ている間の空腹時にはグルコースよりもケトン体がメインのエネルギーになっていると言われています。

必須アミノ酸や必須脂肪酸というものはありますが、必須糖質といものはありません。

ヒトが必要な糖質は「糖新生」という仕組みで十分体内で作ることができるからです。

対外から糖質を摂取する必要性は基本的にはないのです。

また別のところで述べますが、カロリーという考え方にも大きな危険がはらんでいます。

私たちは常々、
「朝ごはん(糖質中心)を取らないと、頭がまわらなくなるよ!」
と教わってきました。

もちろん糖質もエネルギー源となります。

ですが、
糖質だらけの食事を続けていれば、糖質は過剰になります。
オフィスワークが多く、運動量の少ない方にはなおさらです。
生化学的にも「糖質はもっとも脂肪に変わるスピードが速い」ことが分かっています。
食事でとった糖質のほとんどが、脂肪に変わるといっても過言ではないでしょう。

同時に糖質過剰な食事は、タンパク質の量と質、そして脂質に欠けるケースがほとんどです。

「糖質中心の食生活では、高血糖リスクが常につきまとい、さらに必要な栄養素が足りない」という状態が続きます。
いま先進国でも問題となっている「質的栄養失調」と呼ばれるものです。
カロリー的には十分なのに、エネルギー不足になる。
代謝が落ち、さまざまな疾病に悩まさる可能性が高くなります。

糖質制限食は、生化学的・生理的に正しい食事といえるかもしれません。
糖質は必要最低限に抑え、ヒトに必要なタンパク質と脂質をきちんと補う。これが糖質制限食です。
糖質を控えるだけでは糖質制限食といえません。

血糖値の乱降下を防ぎ、必要な栄養素を補うことが、健康への第一歩です。

糖質中心の食生活では、高血糖リスクが常につきまとい、さらに必要な栄養素が足りないという状態が続きます。代謝が落ち、さまざまな疾病に悩まされます。

糖質制限食こそが、生化学的・生理的に正しい食事です。

血糖値の乱降下を防ぎ、必要な栄養素を補うことが、健康への第一歩です。

3)糖質制限食を感覚的に理解する「3つの言葉」

最後のまとめです。

糖質制限食を実践するにあたり、肝に命じておきたい3つの言葉があります。

それは

1.「高血糖なければ低血糖なし!」
2.「効かぬなら、効くまでだそうインスリン」
3.「脂肪が燃えてケトン体」

です。

1.「高血糖なければ低血糖なし!」

よく、「ご飯食べてないからふらふらする、低血糖かも~」という話を耳にします。
ですが、人間はそうそう簡単に低血糖(hypoglycemia)に陥ることはありません。

私たちヒトには糖新生(gluconeogenesis)という機能が備わっています。

ストレスを受けたり、運動したり、食事をしない時間がつづくと、
ヒトの肝臓(一部腎臓)においてエネルギー源である「ブドウ糖(glucose)」を十分に作り出すことができるのです。

ヒトの体内には平均して4g(たった!)のブドウ糖があります。
これを維持するようにブドウ糖を作り出すのです。

その原料は体内にあるアミノ酸(タンパク質のもと)やグリセロール(脂肪酸のもと)が分解されてブドウ糖となります。

血糖値を【直接的に】上昇させるのはブドウ糖という糖質です。

このため、ヒトは基本的には低血糖に陥ることはありません。
低血糖をは、糖質の多い食事や強度なストレスによる高血糖(hyperglycemia)が生じたのちに、急激に血糖値が下がることで生じやすくなります。

イライラしたり、眠くなったり。

高血糖からの低血糖という急激な変化が問題となります。

この高血糖をもたらすのが、糖質の多い食事や仕事・人間関係に起因するストレスです。

こうした血糖(bloodglucose)の急激な上昇がなければ、急激な低下もおこらず、安定した状態がつづきます。

2.「効かぬなら、効くまでだそうインスリン」

高血糖状態が続き、インスリンの分泌が過剰となると、インスリン抵抗性が起きてしまいます。

インスリン抵抗性があるとインスリンの効き目が悪くなります。

インスリンが出ているのに、細胞が血糖を取り込めず、高血糖状態が長引いでしまいます。
そうなると脳はもっとインスリンを出そうとします

そして過剰に分泌されたインスリンがやがて効果を出し始めると、低血糖になるリスクが高くなります。

またインスリンの過剰分泌は、それを分泌する膵臓自体も疲弊させます。インスリンが分泌されなくなってくるのです。

インスリンは細胞に栄養素を取り込もうとする強力なホルモンです。

ヒトの成長にも欠かせませんが、インスリンがでている間は脂肪をエネルギーとして使えなくなるのです。

これでは体内に蓄えられてしまった脂肪は一向に減らず、体はさらに糖質を求めることになります。

糖質過剰→インスリン分泌過剰→インスリン抵抗性→インスリン過剰分泌→さらに糖質を求めてしまう→肥満や生活習慣病

という悪循環が出来上がってしまいます。

3.「脂肪が燃えてケトン体」

糖質制限食の目的は「ケトン体(keton bodies)による健康増進」にあります。

ケトン体をより重視する「ケトジェニックダイエット」と呼ばれる食事法もあります。
ケトン体は糖質の多い食事をして、常にインスリンが分泌されている状態だとほとんどでません。 逆に病気になり、高血糖なのにケトン体がでている状態は「糖尿病性ケトアシドーシス」といわれる深刻な症状です。

ケトン体それ自体は、体内の糖質が枯渇し、脂肪をエネルギーとして利用し始めることで肝臓で生成されます。

空腹時や就寝中にはヒトはケトン体を主なエネルギー源にしています。

実際に体内で脂肪が燃えるというようなことはおきませんが、肝臓で脂肪が分解され、ケトン体が合成されます。それが全身の細胞で利用できるのです。

ケトン体を利用できると、減量効果、抗加齢、抗アルツハイマーなどの症状改善が期待されます。もちろん生活習慣病にも大きな予防・改善効果があります。
癌治療にもその有効性が期待されています。

血糖値を乱降下を穏やかにし、ケトン体をうまく利用できるようにするための食事が「糖質制限食」です。