(三島塾東京校学習風景)
前回(第5回で)、「仕事(学び)もスポーツも、糖質制限でパフォーマンスが向上する」と書きました。今回は、「なぜスポーツにおいても糖質制限が有効なのか」という話しをします。
前回(第5回で)、「仕事(学び)もスポーツも、糖質制限でパフォーマンスが向上する」と書きました。今回は、「なぜスポーツにおいても糖質制限が有効なのか」という話しをします。
2017年の静岡講演で、中学3年生が、「短距離の記録が伸びました」とうれしそうに報告してくれました。さらに、2018年3月、「県下ナンバー1の高校に合格しました」との報告も受けました。まさに「糖質制限」効果なのです。
一日のうちに100mと200mの予選、準決勝、決勝を全力で走るのですから、効率のよいエネルギーの使い方と素早い疲労回復の方法が必要なのは言うまでもありません。そして、スタートの飛び出しをうまくやるには、メンタルも鍛えなければなりません。
糖質中心の食事は、余分な糖質が中性脂肪となって太るので、体が重くなり走るのには適しません。また、糖質を摂ると血糖値が上がります。すると、体がこれは危ないとばかり、インスリンの追加分泌を命令して血糖値を下げにかかります。ちょうどいいところに落ち着けばいいのですが、中には下がりすぎる人がいます。すると、今度は、攻撃ホルモンであるアドレナリンが出て興奮状態を引き起こします。すなわち冷静な状況判断が不可能になります。
たとえば、スキージャンプの高梨沙羅さんは、勝利を重ねている一方で、オリンピックや世界選手権といった大きな大会では優勝がありません。ここぞというところで実力を出し切れません。寒い中で順番待ちをするので、管理栄養士が体を温めさせようと「おはぎ」など糖質を摂ることを勧めていたそうですが、このことが血糖値の乱高下を起こし、記録へのプレッシャーも加わり、踏み切りのタイミングを狂わせたのではないかと私は思っています。
糖質の本来の働きは、赤血球のエネルギーですから体重の1%もあれば十分です。つまり、糖質のたくわえは300gしかありません。20分も走れば枯渇してしまう量です。ですから、マラソン選手の場合、素質があり、名コーチに指導を受け、国を代表して走っているのに、30kmを越えたあたりで決まってペースダウンしてしまうのは、いわゆるガス欠状態なのです。一方、脂質は体重の15%ものたくわえがあります。そして1gあたり9kcalと糖質の倍以上のパワーがあります。ですからアスリートこそ脂質エネルギーを使える体にする必要があるのです。
シドニーオリンピックで金メダルに輝いた高橋尚子さんの場合は違います。指導した名監督小出義雄さんは、高地トレーニングの合宿所での食事を「ステーキ」に指定していたそうです。「中学、高校の指導者が勝ちたいがために、選手に鉄や栄養剤の注射を打たせてる。努力で強くなってるわけじゃないんだ。そういう選手をしっかりした食事を摂らせてまともに走らせるのに、3年かかるよ」と語っています。
近年では、シスメックスの陸上部の管理栄養士清水聡子さんも「走りなさい、そして、食べなさい」と言っているそうです。ネット上では、部員たちがにこやかに焼肉を食べている写真を見ることができます。
太るのは炭水化物であり脂質ではないのに、余分な脂肪をつけないためにと“脂質”制限までするので、ケトン体に変わることで効率のよいエネルギーになる“脂質”が不足してパフォーマンスが落ちるのです。
栄養不良は体のあちこちに変調をきたします。これをFATといいます。「太っている」という意味ではなく、「女性(Female)アスリート(Athlete)Triad(三主徴)」の頭文字で、女性アスリートにみられる主な3つの症状<栄養不良、無月経、骨粗しょう症>を意味します。
驚いたことに、陸上女子の世界では、「無月経で一人前」なのだそうです。これでは健康のためのスポーツではなく、勝つためだけのスポーツであり、選手はそのための道具になってしまっているのですから本末転倒です。
現に、2018年10月、福岡でクィーンズ駅伝の予選であるプリンセス駅伝がありました。ワイドショーで大きく取り上げられたので、覚えている方も多いと思いますが、走っている最中に骨折した選手が残り200mを“ひざで走った”のです。
監督は棄権を指示したのに、現場にうまく伝わらず、本人の「続けたい」という強い意志を尊重して、審判が止めなかったというのです。「あそこで止めたら心の傷が残るだろう」とか、「傷が深くなり今後の選手生命にかかわる」といったさまざまな意見が聞かれました。
しかし、私はそのどちらでもないと思いました。問題の本質は、「疲労骨折を招くような食事にこそある」と思います。
同じようなことが、高校スポーツにもあります。選手たちが、どんぶり飯をお代わりする映像がよく流れますが、もとは全国優勝14回の長崎・国見高校サッカー部員がどんぶり飯を食べるシーンにあり、これが全国のスポーツ系の監督の脳裏に焼きついたのかもしれません。肉で体を作るにはお金が足りません。とりあえずご飯で体を作ろうというわけです。
これについては、大リーグのダルビッシュ有さんも、「寮時代には、ご飯ばかり。もっと肉を食べたかった」とツィートしています。
以前、福岡県のある進学校のラグビー部の監督が、「疲労骨折は走って治せ」と言ったと、部員の生徒から聞いて驚いたことがあります。このような指導者の栄養学に対する無関心のせいで、栄光の影に故障をして夢を閉ざされた生徒がたくさんいるということを知る必要があります。
相撲の世界でも、体を大きくするために、「けいこ・めし・ねる」と、大食であることは有名です。その結果、糖尿病になります。横綱が60歳になると、赤い縄を巻いて「還暦土俵入り」で祝うのですが、横綱のうち60歳を越えたのは70人中20人とみな短命です。超えたのに体調不良で土俵入りができなかったのが11人ですから、無事、「還暦土俵入り」が出来たのは、わずか9人しかいないというのは残念な話ですね。このことからも炭水化物に頼る体作りは健康的ではないことが明白です。
世界のスポーツ界に目を向けると、2014年のワールドカップ・ブラジル大会で優勝したドイツのサッカーチームが食事にこだわったことは有名ですが、それぞれの種目に見合う骨と筋肉を作るための食事を科学的に考える時代が来ているのです。
もうお分かりでしょうが、カーボローディングには限界があることがわかっています。プロティンなど良質なたんぱく質が必要であることも広まっています。それでもまだ何かが足りない。(江部先生は、私が教えを受けた8年前(2011年)に、すでに脂質の重要性を説いていましたが、)ここでようやく“脂質”の働きに目が向けられるようになりました。
サッカーの長友祐都さんがMCTオイルのCMをしています。そうです、分解効率のよい中鎖脂肪酸こそが運動のパフォーマンスをあげる栄養素であることがわかってきました。
この点に着目した東京大学の寺田新先生の研究に大いに期待が持てます。(オレオサイエンス第18巻8号2018)
2020年の東京オリンピックの開催国として、大会を成功に導くためには、やはり日本勢のメダルの数が期待されると思います。脂質を効果的に摂ることで選手たちが最大限の能力を発揮できるよう願ってやみません。
今月のレシピ:「肉団子」※おまけレシピあり
運動のパフォーマンスアップのために、良質の「油(植物性)脂(動物性)」をしっかり摂りましょう。※キャノーラ油はNGです。
動物性の脂の代表「ラード」の効果:日本脂質栄養学会は、長寿の油脂として、エゴマ、フラックス、DHAとともに、ラード、バターを推奨しています。なんと、オリーブ油は寿命を異常に縮めるとも言っています。
植物性の油の代表「MCTオイル」の効果:主成分である中鎖脂肪酸は、ココナッツやパームフルーツなどに含まれる天然成分です。母乳や牛乳などにも含まれています。一般的な油と比べて、4~5倍早く分解されるため、エネルギーになりやすいのが特長です。もともと手術後の患者さんや未熟児の栄養補給など、医療現場での利用が中心だったのですが、いまでは乳幼児や高齢者のエネルギー補給、トップアスリートのコンディション管理、トクホの健康オイルなど、活躍の場を大きく広げています。さらには脳のエネルギーとしても有効なので、仕事や学習能率のアップ、認知症・アルツハイマー予防・改善にも有効であると期待が高まっています。
そういうわけで、今回のレシピは、ラードで揚げた肉団子に、付け合せのサラダにはMCTオイル使用のドレッシングを使いました。
A:肉団子 材料(2人分、写真は一人分)
卵1個
鶏、豚のひき肉、牛・豚の合い挽き お好みで250g
クレソン1把 ※青菜なら、小松菜、ニラなど何でも
ラード ※揚げ油として
作り方
1ミンチに、卵(全卵)1個、塩・コショウ少々水を入れ、よくもむ。
2クレソンを刻み1に混ぜる。
3一個25g前後に手のひらで丸める、12個できる
4ラードを180度に加熱し、6分ほど揚げる
B:グリーンサラダ
お好みの葉野菜(レタス、キャベツ、白菜、青梗菜、水菜、春菊、小松菜など)、生で食べられるもの。 ※ほうれん草はシュウ酸が多いので生食できません。
C:ドレッシング
仙台勝山館・MCTオイル大さじ3、かぼす・レモンなどの果汁大さじ1、コショウ、塩、以上の全量をまぜるだけ ※九州食肉学問所の「柚こしょう」がよく合う
皿に、Bを盛り付けCをまわしかけ、揚げたてのAをのせて出来上がり
◎おまけ~さらに時短・簡単:クレソン団子スープ(2人分 ※写真は一人分)
なべに水500CCを入れ、沸騰したら、上記レシピで作った「肉団子」を入れ、中火で5分ほど煮込む。塩、コショウ、しょうゆ、または、味噌など、お好みで味をつける。器に盛り、クレソンの葉を飾る。
※土鍋があれば、そのまま食卓に。
※お好みで、紀文のこんにゃく麺を加えたり、溶き卵、温玉などのトッピングをしたり、仙台勝山館のMCTオイル、ごま油などを回しかけたりしてより美味しく!
肉団子。とてもいいですね。子供は肉団子が大好きな生き物です(笑)練り込むクレソンも栄養価の高い食材として重宝されています。お肉に足りない食物繊維やその他のビタミンやミネラルを補ってくれます。これをスープでのめば、体もぽかぽか。栄養満点。これから受験を迎えるお子様の夕食や夜食にぴったりですね。しかも低糖質で眠くならず、集中力もアップしますよ♪
MCTオイルに含まれる中鎖脂肪酸は肝臓ですぐにケトン体というエネルギーに変わります。もちろん血糖値を急上昇させることはありません。脳のエネルギーにもなります。取り過ぎはお腹を下すこともあるのでご注意ください。
大事なのは糖質といっしょに摂らないこと。糖質+脂質はもっとも太りやすい危険な組み合わせです。血糖値の上昇は糖質のみのときよりも穏やかになりますが、この組み合わせには注意しましょう。
さて、コラムにもある通り、アスリートの間でも糖質制限食で結果を出す方が増えてきました。その一方で過酷な栄養制限で、体を崩してしまう選手も多くでています。
昨年末には格闘家のRENAという女性が、過酷な栄養制限のため、計量中にダウン。試合は中止となってしまいました。
私たちの一般人でも「さらに痩せたい、きれいになりたい」とストイックに減量に取り組む方を多く見受けます。体重の増減に一喜一憂。
ストレスですよね。ストレスは健康の大敵です。
糖質制限食はおいしくたのしくが大切です。
九州産 牛豚合挽きミンチ 250g
【10810】
鹿児島産若鶏 学問所チキンミンチ 250g
びたけん 九州産黒豚LeafFatの純低温焼きラード一番搾り 200g
瓶詰【49300】
びたけん【肉専用】大分特産柚こしょう 80g入り
子供の糖質制限一覧