糖質制限と果物

糖質制限食をはじめて、今現在食事の脂肪比率を60%にしています。糖質量は10%、のこり30%がたんぱく質です。

もともと甘いものは食べないので、甘いものを断つのはほとんど苦労しませんでした。ごはんやパンなどの主食はまったく食べたいとは思わなくなりました。 ラーメンはいまだに苦労していますけど(笑)

甘いものとしては果物を時折食べています。

大分はおいしい果物がいっぱい生産されるところ。

果物農家の友人もたくさんいますし、とても良い果物を年間を通して作っています。

りんご、みかん、なし、ぶどう。

どれも水々しくてとてもおいしそうです。つい、手が伸びてしまいます。

ところでこれら果実は糖質制限的にはどうなのでしょうか。

糖質制限と果物
糖質制限と果物

果物の糖質

果物は多くが水分ですが、糖質としては、果糖、ぶどう糖、ショ糖と呼ばれるものが集まってできています。

例えばりんご1個(約240g)だと

  • カロリー:約150kcal
  • 遊離糖含有量:35.6g(果糖:18g、ぶどう糖:6g、ショ糖:9.6g、ソルビトール:2g)
  • 水溶性食物繊維含量:0.95g
  • 不溶性食物繊維含量:2.95g
  • ビタミンC:8mg

となるようです。
※日糖医協メルマガを参考

果糖(フルクトース)は単糖で六炭糖に分類されます。炭素が6個結合してできています。二番目の炭素にケトン(>C=O)がついてます。

ぶどう糖はグルコースです。果糖と同じ単糖で六炭糖です。最初の炭素にアルデヒド基(-CHO)がついています。

グルコースとフルクトース
ぶどう糖(グルコース)と果糖(フルクトース)の化学構造式※出典wikipedia

この構造式だとわかりにくいのですが、果糖は上から2番目の炭素がケトンになっていて、ぶどう糖は最初の炭素がアルデヒド基になっています。

ショ糖(スクロース)はいわゆる一般的な砂糖です。 ショ糖は上のふたつ、果糖とぶどう糖が結合してできているので、二糖類に分類されます。

ショ糖(スクロース)
ショ糖(スクロース)※出典wikipedia

ぶどう糖も果糖も直線上ではなく、通常は環状になっています。そして水素結合することでショ糖になっています。

消化されるとどのみち、ぶどう糖と果糖に分解されます。

ソルビトールは糖アルコールに分類されるものです。

りんごにおいては糖質量のうちの半分が果糖になります。

糖質については
第12回 食肉の栄養 -糖質(炭水化物) 編-
もぜひご参考ください。

果物のと糖質量とGI値

糖質が血糖値を上げることに間違いはないでのですが、食べ物によっては血糖値の上がり具合は異なります。

これを判断するのに、食物に含まれる糖質量そのもものもちろん大切ですが、「グリセミック指数(GI)」というのもよく参考にされます。

GIは食品の炭水化物50グラムを摂取した際の血糖値上昇の度合いを、ブドウ糖を100とした場合の相対値で表されます。

絶対的な基準はありませんが、GIが70以上で「高」、50~69で「中」、49以下で「低」レベルの血糖値を上げるとされています。
糖質制限的には中よりも上はおすすめできませんね。

またグリセミック負荷というのはGIに、その食物の一般的な1食分の重量を掛けあわせたものです。
これはGI値が高くても、その食品の一食分の量がすくなければ、GL値は少なくなります。逆にGI値が低くても、一食分の量が多ければGLは高くなり、血糖値をより上げてしまうことになります。

GIは一般的に20以上で「高」、11~19で「中」、10以下で低レベルとなります。

名称糖質制限
おすすめ度
糖質量
(100gあたり)
GI値GI負荷
フランスパンX54.89515
りんご13.1386
バナナX21.45212
ぶどう15.2468
キウイフルーツ11.0536
モモ8.9425
なし10.4384
パイナップル8.8597
スイカ9.2724
いちご7.1401
アボカド0.9不明不明

※出典「やせたければ脂肪をたくさんとりなさい」
※参考「炭水化物の食べ過ぎで早死してはいけません」
※フランスパンは果物の糖質量、GI,GLと比較するためにのせました。

くだものは他の炭水化物(パン、コメ、麺)やお菓子にくらべれば基本的に糖質は少ないですね。

りんごは100gあたりの糖質量はさほど高くありませんし、GIも低レベルです。GLも6と低くいですね。
しかしこの数値はりんご約半分の大きさを想定しているようです。
1個まるごと食べれば、GIは一気に高レベル。GLは中レベルになってしまいます。
逆に食事についてくる、半分をさらに4分の1カットしたレベルであれば、もうほとんど気にする必要はないですね。

GIやGL値にはビタミンや他の栄養素が一切考慮されていません。GIやGLが低いからといってそればかり摂取するのは危険です。

 

糖質の代謝

果糖そのもののGIは20程度と低いため、果物のGIやGLも比較的低いものになります。

果糖はそのうち10%がブドウ糖に変換され吸収されるます。残りの90%は果糖のまま吸収され、肝臓でそのまま直接代謝さ
れるそうです。そのため果糖は血糖値をほとんど上昇させず、インスリンの分泌もほとんど促しません。
この話だけ聞くと果物は糖質制限にとってもとてもよさそうですね。

 

江部先生によると

つまり、果糖のGI値が低いのは、果糖が「ブドウ糖として」利用されるのはごく一部であるからであり、果糖の吸収速度が遅いからGI値が低いというわけではありません。

消化吸収されて肝門脈に流れ込んだ果糖は、肝臓でブドウ糖より速く解糖作用をうけます。

ブドウ糖が解糖系に入って代謝されていく時には、ホスホフルクトキナーゼという酵素が必要なのですが、果糖はこの段階をバイパスして、速やかに解糖系に入って代謝されるからです。

肝臓に取り込まれたブドウ糖と果糖は、解糖系-TCAサイクルを経てATP産生に消費され、余分なものはグリコーゲンと中性脂肪に変換されます。

肝臓のグリコーゲン蓄積には限りがあるので、ブドウ糖より速やかに代謝された果糖の代謝産物によって脂肪酸合成が促進され、中性脂肪の合成が亢進し、高中性脂肪血症となります。

血糖値の上昇をみるGI値では「ブドウ糖>砂糖>果糖」ですが、中性脂肪値の上昇速度は、「果糖>砂糖>ブドウ糖」となります。

このように、果糖は、ブドウ糖のように血糖値を上昇させませんが、中性脂肪合成を促進させ、太りやすい性質をもっています。

果物の糖質の主成分は果糖ですので、血糖値はパンや米など穀物より上昇させにくいですが、中性脂肪に変わるという意味では、かえって太りやすいと思います。

なんと果糖は血糖値は上昇させないもの、結果として中性脂肪に変わるのもはやく、太りやすいということになるようです。
これは驚きですね。

 

でも果物は栄養素も豊富で、ちょっと甘いものが欲しいなというときにはベストだと思います。
果物は、「いいものをちょっと」がいいのかもしれませんね。

 

ちなみに江部先生のおすすめとしては、

通常の糖尿人やメタボ人には、甘味料はラカントS(サラヤ)、パルスイートゼロ(味の素)、シュガーカットゼロ(浅田 飴)など、エリスリトールが主成分のものがお奨めです。

ということです。エリスリトールは糖アルコールに分類され、血糖値をほとんどあげませんが、摂り過ぎると下痢になってしまいます。この点も要注意ですね。