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これからは動物性油脂の時代! タロー(Beef Tallow)の上手な作り方&保存法

タロー(Beef Tallow)の原材料

まずケンネン脂を用意します。20kgくらいあると作業効率がいいですね。

次にケンネン脂の中からキレイに腎臓(マメ)を取り出します。

取り出しだマメは煮るなり焼くなり、わんちゃんにあげるなりしましょう。一石二鳥とはまさにこのことですね。

タロー(Beef Tallow)の上手な作り方

ケンネン脂はそのまま使ってもいいのですが、ミンチ機で粗挽きミンチにしておきます。この状態だとブロックのときよりも低温で脂を抽出できます。

中華鍋などで極弱火で脂をゆっくりと煮出していきます。脂に含まれるわずかなのタンパク質がこげるとにおいの原因となります。100%除去は難しいですが、できる限り低温で煮出していきます。

脂がすべて溶けたら、のこったカスを濾して、ビン詰めにして完成です。温かいうちは薄黄色の色味をしていますが、冷めると白くなります。

タロー(Beef Tallow)の上手な保存方法

瓶詰などで冷蔵庫や冷凍庫に保管していたラードはそのままだと使いにくいですよね。固体の場合は湯煎して溶かし、家庭用の製氷皿に移し替えて冷凍しておきます。

これを冷凍庫にいれてカチカチになった時点で取り出します。

製氷皿は安いものでもいいのですが、この製氷皿は裏側から押して取り出すことができるので、脂にもばっちりです。

使いたい分だけ取り出し、炒め物脂などとして利用できます。

お肉の上手な解凍法

お肉の冷凍保存をするにあたって、注意しなければいけないのは、お肉が緩慢凍結か急速凍結されるかです。

このことは前回のブログに書いていますのでご参考いただければ。

お肉の上手な保存法 その2

緩慢凍結はお肉の中の水分が大きな氷塊となってしまい、肉を傷つけます。

画像引用:一般社団法人日本冷凍食品協会


急速凍結されていれば100%お肉の品質劣化がないかといわれるとそうではありません。

水は氷ると体積が増えるという化学的事実は、多かれ少なかれ食肉の品質劣化をもたらします。

コロナの影響もあり、飲食業界や食品業界では急速冷凍庫の導入が進んでいます。

いくら急速冷凍庫を利用しても、一度に大量の食品を冷凍しようとするとその性能は落ちてしまいます。マイナス10℃くらいで表面だけ急速凍結、あとは普通の冷凍庫で最終凍結なんてケースもよく聞きます。

まあ、完全な緩慢冷凍よりはましですが。

単価の安い豚肉や鶏肉などに急速冷凍庫を使用すると、コストが見合わない場合もあります。

そういった意味も含めて(笑) 「きちんと」急速冷凍された食肉は、生肉とそん色のない品質で保管できます。

せっかくお肉をきちんと冷凍していても、解凍に失敗すると残念なことになります。そこで、今回のブログのは「お肉の解凍」についてです。

お肉解凍の注意点

お肉の解凍について注意すべき点は、

1)ドリップをできる限り抑える。

2)解凍時間はできるだけゆっくりと。

3)微生物の繁殖を抑える。

4)余計な乾燥をさける。

ということです。

1)ドリップをできる限り抑える。

そもそも緩慢凍結されてしまったお肉を解凍すれば、ドリップの大量流失はさけられません。

水分のみならず、栄養素やうまみといった有用成分も流れだしてしまいます。

こうしたお肉をうまく使うには、超低温でゆっくりと加熱して調理し、うまみを捨てない(笑)くらいなものです。

冷凍保存したお肉をドリップを抑えて解凍するには、そもそも急速冷凍されたお肉を利用することが

大前提となります。

次項で詳しく説明しますが、解凍時の温度が低いほど(時間がゆっくりなほど)ドリップは少なくなります。

2)解凍時間はできるだけゆっくりと。

凍結の場合と同じように、解凍についても「緩慢解凍」と「急速解凍」があります。一般的には緩慢解凍のほうが、肉質への影響は少ないといわれています。

緩慢解凍はドリップ量が少ないといったメリットがありますが、時間がかかるというデメリットがあります。

逆に急速解凍はドリップが若干多くなりますが、解凍時間が短いというメリットがあります。

ご家庭でお肉を使う場合には、緊急を要する場合もあるので、うまく使い分けるといいですね。

この解凍時間は「解凍媒体」になにを選ぶかでも変わってきます。

解凍媒体とは解凍するときにお肉に接触しているものがなにかということです。

解凍媒体には、

・空気(自然解凍)

・水(流水解凍)

・金属(解凍プレート)

などがあります。

夏場の空気中での自然解凍は、気温も高く、解凍速度は速くなります。

流水解凍でも、冷たい水を使うのか、肉が変色しない程度のぬるま湯を使うのかで変わります。

ネットでも簡単に購入できる金属性の解凍プレートも解凍スピードを上げるのには便利です。

うまく解凍するには、解凍媒体の温度と肉の温度があまり大きく離れないことも大切です。

3)微生物の繁殖を抑える。

解凍したお肉からドリップが多かったり、

解凍時の解凍媒体の温度が高かったり(例えば夏場の室温)、

解凍に時間がかかると、

微生物が繁殖してしまうリスクが高くなります。

かといって、ご家庭で解凍後に十分な加熱調理をするにあたっては、あまり気にする必要なありません。

お肉をカットしたまな板や包丁で、そのまま野菜を切ったりしなければ十分です。

4)余計な乾燥をさける。

あまり気にする必要はないのですが、お肉が直接空気にふれている場合、

お肉の表面が酸化したり、乾燥したりします。

ご家庭で解凍する分にはまず問題ないのですが、お肉はラップや真空・脱気パックなどに

つつんで解凍してあげるとこうしたリスクは避けられます。

余談ですが、お肉の破片やミンチの屑を、室温中で放置するとどうなると思いますか?

腐敗する?

いいえ、実はほとんどのケースでお肉は乾燥してカピカピになります。

つまりビーフジャーキーな感じになります。

こうなると腐りません。

最近ではドライエイジングビーフが人気ですが、ドライエイジング中の湿度はなんと70%です。

その他にも冷蔵庫内の温度や送風といった管理もありますが、

お肉のブロックはカピカピに乾いていきます。表面は黒焦げたようになり、カチカチです。

その中ではお肉の熟成がすすんでますが。

乾燥すると微生物が繁殖しにくくなりますが、食感が悪くなるというトレードオフがあります。

まとめ

以上の4点すべてを満たした完全な解凍方法は残念ながらありません。

3)と4)については、ご家庭での調理前提ではさほど気にする必要がありません。肉屋さんが、冷凍であれ冷蔵であれ、お肉を販売するときには十分注意する必要があります。

大切なのは1)と2)

解凍媒体の温度をなるべく低くすると、解凍時間は長くなるというトレードオフがでてきます。

温度が低ければ、解凍には時間がかかるからです。

その変わり、ドリップが抑えらえるというメリットがでてきます。

解凍媒体のチョイスで、こうしたトレードオフの改善がはかれます。

・空気(自然解凍)

・水(流水解凍)

・金属(解凍プレート)

どれを使うかで、解凍時間は短くなります。

手間がかかったり、衛生面に注意が必要などのデメリットがでてきます。

ご家庭でのベストな解凍方法

ベストな解凍方法は、お肉のカットや食材の準備にかけられる時間によって変わります。

ブロック肉や厚めのステーキ肉の場合

冷蔵庫内での自然解凍が一番です。ブロックや厚めのステーキだけでなく、鶏モモ肉やムネ肉などもこの方法が一番です。

短くても半日、長くて1日以上かかる場合がので、事前に準備が必要となります。またこの場合の解凍媒体は空気となります。お肉に空気が直接ふれないようラップやビニルで包んでおくとよいです。

もしかけられる時間がない!あっても2時間くらい!

という場合には、流水解凍がおススメです。

流水解凍の場合も、お肉はビニルや真空袋で脱気パックし、解凍媒体である水ができる限りお肉に接していると解凍時間が短くなります。

流水は冷たければ冷たいほど、解凍には時間がかかりますが、ドリップは少なくなります。

薄めステーキであれば、解凍プレートに乗せて解凍してもよいかもしれません。解凍は若干早くなりますが、少しドリップも多くなる印象があります。ときおり裏返したりしないと、解凍にムラがでます。

電子レンジの解凍機能を利用する手もありますが、機能的にはまだまだの印象です。解凍ムラができたり、焼け(煮え?)る部分ができたりします。短時間ずつ解凍し、裏替えして、また短時間の解凍といったわずらわしさがあります。

もっと解凍時間を短縮したい!という場合には裏技があります・・・

それは「冷凍のまま極弱火で調理する」というものです。

解凍時間は短いのですが、調理にものすごく時間がかかります(笑)

トンカツやチキンカツなどの冷凍フライ生地になっているものは、冷凍のまま揚げたほうが、解凍とともに肉たん白質の熱凝固が起こり、内部からのドリップ流出を防ぐので、解凍による肉質の劣化は起こりにくくなります。

お肉屋さんにあるような大きなブロック肉では、高周波による急速解凍という手段もあります。

ですが、これはご家庭では現実的ではないですよね。

うす切り肉、切り落とし肉の場合

お肉がうす切りや切り落とし、こま切れなどで、うすくトレイやビニル内に盛り付けられている場合には、解凍にも時間がかかりません。

解凍プレートにのせて、とき折り裏返せば、短時間で簡単に解凍できます。常温での短時間の自然解凍でも十分をです。

お肉が団子状になっているときは要注意です。「ブロック肉」と同じ方法で解凍するのがおススメです。

ごくまれにですが、カチカチに冷凍された切り落とし肉を、そのままアツアツのフライパンで調理し始める方がいます。この場合、調理後の肉の食感がごわごわになる場合が多いです。 野菜の上で蒸し焼き状態にする。ごく弱火で解凍しながら焼くとこうした事態は改善されます。でもやはりきちんと解凍してから調理してくださいね。

お肉の上手な保存法 その2

学長です。

お肉の上手な保存法 その1

の続きです。

小学生のころの理科の実験で

牛乳パックにいれた水を凍らせたことが記憶があります。

翌日になると牛乳パックがパンパンになって膨らんでました。中にはパックが破裂しているものもありました。

多くの液体は冷却されて固体になると、体積は小さくなります。

水はその分子構造のせいで、凍結すると体積が増えます。増加分の体積が紙パックを破るまでになるんですね。

冬場は水道管破裂なんてことも引き起こします。

水分の多いお肉の凍結にはこの水の「氷ると体積が増える」性質が悪さをしちゃうのです・・・

冷凍曲線(緩慢凍結と急速凍結)について

冷凍曲線とよばれるものがあります。

画像引用:一般社団法人日本冷凍食品協会

水がこおり始める0℃からー5~6℃くらい(最大氷結晶生成温度帯)までの状態がながければ長いほど、氷の結晶が大きくなり、また不揃いになります。

これを「緩慢凍結」といいます。

とくにご家庭の冷凍庫は開け閉めが多かったり、食品がパンパンにはいってるケースが多いですね。またこれから気温上昇してくると状況は悪化する一方です。

表示温度は低くても、実際は0℃よりを少し下回るくらいの温度が続きます。

購入してきた生肉をこのような状態で冷凍すると、緩慢凍結になってしまいます。そうなるとお肉の中の水分が大きな結晶となり他の組織を押しつぶし、傷つけてしまいます。お肉の断面に氷の粒粒がはっきりと見えてきます。

解凍したときにドリップが多かったり、お肉の食感が悪くなってしまいますね。ドリップが多いと、解凍時の菌の繁殖にもつながってしまいます。

脂肪分の霜降り肉はそこまで影響でないのですが、赤身のお肉や鶏肉などは水分が多いので影響が大きくなります。そもそも水分含有量の少ない食品はあまり影響はありません。

緩慢凍結には逆に食品の食感を柔らかくする効果もあります。とくにイカやタコなどは緩慢凍結して解凍すると、食感が柔らかくなります。ドリップはうまいこと料理にいれてしまえば、まあ、海鮮のうま味は活用できます(笑)

お肉には急速凍結がやっぱりいい

緩慢凍結の反対が「急速凍結」です。

10分から1時間程度で最大氷結晶生成温度帯を通過させることで、氷結晶の粒が小さくなり、他の組織を破壊しません。

解凍後にもドリップが少なくなり、食感も生肉のときと同じになります。

ただこの急速凍結、、、やはりコストと手間がかかります。なのでやはりお肉屋さんに初めから冷凍してもらうのがお得です♪

急速凍結にもいろいろあるのですが、当店では鶏肉や豚肉などのカット商品は、生肉をカットした後、重ならないようアルミの板に広げて凍結専用の大型冷凍庫(4畳分くらいあります)でマイナス25℃で凍結・保管します。

うす切り・切り落としなどは5分程度、若干厚みのあるものは20分、もっと厚い鶏モモ肉などのブロックは1時間程度でカチカチになります。

液体型の急速冷凍庫では、牛肉商品やブロックなどを凍結しています。

※冷凍の過程で、空気中の水分が霜となってお肉につく場合があります。こちらは解凍の過程で基本的には蒸発していきます。

そして発送直前に冷凍庫から取り出し梱包します。クロネコさんがくるまではまた別の冷凍庫(これまた4畳分)でマイナス20℃で保管しています。

一度凍結してしまえば、再解凍されて再度緩慢冷凍されない限り、ご家庭の冷凍庫で保管しても問題はほとんどありません。

あとはきちんと解凍して、料理に使えばOKですね。

上手な解凍については次回のメルマガで♪

お肉の上手な保存法 その1

学長です。

九州地方は梅雨入りをしました。
店頭のお客様も天気の様子をみて、晴れたら「BBQしよう!」みたいな感じです。
週末だけでも晴れてほしいのですが、晴れると急に忙しくなるので、なんとも見通しの立てづらいシーズンです。

梅雨時期になると、気になるのが食中毒ですね。まあ、年中行事のような感じになってしまってますが・・・
アニサキスの食中毒は連日報道されてますし、鶏肉の生食でのカンピロ食中毒も頻繁に起きてます。
幸い死亡事故はここ最近おきていませんが・・・食中毒にはなりたくないですよね・・・

国産も外国産もお肉の値段は高くなる一方。
スーパーなどで安いときにまとめて購入して、
小分けして冷凍ストックするという方も多いと思います。

ほんとうはこれ、やめたほうがいいのです。
お肉をなるべく長期保存しつつ食中毒を避ける、かつお肉のおいしさを維持するにはベストな方法では
ありません。

ではどうすればいいのでしょう?

その前に「冷蔵保存」について確認しておきたいと思います。。

冷蔵保存について

スーパーで買ってきた冷蔵のお肉をパックのまま家庭用冷蔵庫にいれたままにしておくと、いずれ変色したり、においがでてきます。
つまり腐りますよね。 2~3日、早ければ翌日には腐っていた、なんてこともあります。
ミンチなんかはとくに変色が早くなります。

多くの低温食品で腐敗のもととなる腐敗細菌は0度~25度(至適温度は15度~20度)で発育します。
冷蔵庫の温度が低いほど、腐るスピードは遅くなります。
ご家庭の冷蔵庫って開け閉めの多いですよね。
表示温度は5度くらいでも、平均は10℃以上の時間がほとんどでなのではないでしょうか。
これでは腐るスピードは速くなってしまいます。

でも「腐った」=「食中毒を起こす」とは簡単にはいえません。
まあお腹は下すかもしれませんが。

多くの食中毒菌の発育温度が15~45℃(至適温度は35~38℃)です。
なので冷蔵庫できちんと保存されている限りでは、
変色したから、においがでたから、
食べられないということではないのです(十分な加熱が前提です)。
でもなにぶん相手は目にみえないウイルスと細菌です。
あえて立ち向かいたくはないですよね。

今、ほとんどの冷蔵庫にチルド室がついてますね。
だいたい0℃です。
腐敗細菌もこの温度だと増えにくくはなります。
なので、「長期保存」と謳い文句にしているわけです。
でも腐敗細菌が死滅するわけではありません。
温度が上がってくれば、それなりの反応が起きてしまいます。

このチルド室、とてもいいのですが、普通「小さい」ですよね。
開け閉めしない時間が長いと、お肉の表面が凍結してる場合があります。
こうなると温度上昇とともにお肉からのドリップが増える要因になります。
そして食感も損なわれてしまいます。
これを「緩慢冷凍」といいます。ご自宅の冷凍庫でお肉を冷凍すると緩慢冷凍になってしまいます。
もっとも避けたいお肉の冷凍保存状態です。

というところで、長くなりましたので、「冷凍」については次回に。

お肉の味はどうやって決まる? その2

こんにちは! コロナウイルスが毎日TVを賑わせていますね。感染症にかかりやすい方にとっては他人事じゃないかもしれません。
ですが基本的には過度に反応せず、自分の体調を万全にすることが大切ですね。

今回のブログは前回の続きです。

お肉の味を決める要因(復習)

詳しくは前回のブログを読んでいただくとして、お肉の味を決める要因として、

1)飼料の種類
2)肥育期間の長さ
3)畜種・血統・生産者の人柄・風土

の3つを取り上げました。
そして、1)飼料の種類についてざっと見ていきました。
すこしおさらいですが、まずは下記画像をご覧ください。

画像1 ウルグアイ産ビーフ グラスフェッド(左)vs ショートグレインフェッド(右)

3枚の画像の中のお肉は、それぞれ、左側がグラスフェッド( 牧草飼育)、右側がショートグレイン(放牧牧草後濃厚穀物飼育)です。

お肉の赤身の具合、ロース断面積の大きさがかなり違うと思います。 ステーキにカットしたものはどちらも320g程度。ショートグレイン(右)のほうがロース断面積が大きいため、厚さも薄くなります。
ショートグレインのほうには霜降りも入っています。わずかですが。ロース芯とマキの間の脂や体表側の脂肪(ロース芯とカブリの間)も多くなっています。脂が入ってきた分膨らんだ。そんな印象です。

一般的にはショートグレインのほうが、やわらかく、臭みがすくなく、ジューシーだと感じられると思います。
これがグラスフェッドが「かたい、くさい、おいしくない」とされてきた理由です(好きな人もいます)。

あくまでも平均的な話ですが、

グラスフェッドは 24~30ヶ月齢でお肉になります。離乳後は基本的に牧草と補助飼料となります。

ショートグレインフェッドは、18ヶ月齢まではグラスフェッドと同じように育てられます。18ヶ月齢を超えると、フィードロットと呼ばれる場所に集められ、穀物肥育をしていきます。
ショートグレインの場合は3か月~4ヶ月程度ですです。
トータルで22ヶ月齢ほどでお肉になります。

つまりショートグレインはグラスフェッドよりも短い月齢(割り引いて同月齢としても)でお肉の断面の大きさは2倍になった感じを受けます。

これが3~4か月と短いとはいえ、穀物肥育の威力です。穀物は太るんです(笑)

肥育期間の長さの影響

お肉の味を決める要因の2つめ

2)肥育期間の長さ

についてみていきたいと思います。

画像1で登場したグレインフェッド。
これはショートグレインですが、

・ショートグレイン
・ミドルグレイン
・ロンググレイン
と3種類あります。
ロングのほうがミドル、ショートよりも穀物肥育期間が長くなっていきます。
ロース芯の面積も比例して大きくなりますが、霜降りの度合いも多くなってきます。 ショートで日本の等級の1等級~2等級の間、ロングで3等級くらいなイメージでよいと思います。
やわらかさ、味ともにかなり違いがでてきます。

次に、ウルグアイやNZのショートグレインと日本やアメリカの穀物肥育牛の違いをみていきたいと思います。まずは下記画像をご覧ください。

画像2 国産交雑種(左)とショートグレイン(右)の違い

画像2上半分の左側が国産交雑種3等級です。その右側がウルグアイ産のショートグレインです。画像下半分の左側がそれぞれをアップで撮影したものです。

お肉になった月齢はほぼ同じ24か月程度です。
国産のほうはより霜降りが入り、断面積も大きくなっています。

牛の種類の違いによる差もあるのですが、これには穀物肥育の期間の長さが大きく影響しています。和牛や交雑種は平均して10ヶ月齢から穀物肥育をうけていきます。写真の交雑種の場合は14ヶ月ほど穀物肥育をうけたことになります。 ウルグアイ産のほうは4か月程度です。

今回画像がないのですが(想像してください)、一般的に高級霜降り肉と呼ばれる4等級とか5等級をつくるためには交雑種よりもさらに2か月以上の穀物肥育をしていきます。 黒毛和牛は霜降りが入りやすいということもあるようですが、霜降りの度合いに決定的なのは穀物肥育期間の長さです。

ちなみに日本と同じトウモロコシ中心のアメリカ産ビーフは18ヶ月齢ほどでお肉になるそうです。これはなぜか・・・いずれ(笑)

今回まとめ

穀物肥育の長さは霜降りの度合いに大きく影響します。それがお肉の大きさにも影響してきます。

グラスフェッドをどんなに飼育期間をのばしても、さほど霜降りははいりません。長く飼育した分、お肉が硬くなっていきます。 
黒毛和牛を牧草だけでどんなに長く育てても高級霜降り肉にはなりません。

さらに同じ穀物でも、トウモロコシなのか麦なのかで、霜降りの入り具合、味がかなり変わってきます。

次回は、肥育期間の長さのつづきです。牛肉ではなく、豚肉・鶏肉についてみていきたいと思います。

お肉の味はどうやって決まる? その1

ひさびさのブログ更新です(毎回これ書いてる気がしますが)。

新年一発目(もう2月ですが)、ちょっと長めの記事を書いてみました。

昨年は店頭販売を開始しました。
1年間、店頭でお客様とお話ししながら思ったのですが、

「国産」=「おいしい」+「安心・安全」

と思い込み過ぎてるお客様が多いということです。

情報の少ないまた年配の多い地域がらですので、こうした思い込みがあることも仕方ないことかもしれません。TV番組や週刊誌の情報をうのみにする傾向もあります。

「安心・安全」についてもなんだか根拠もなく国産第一主義みたいなのがあります。

一方で国産牛肉である黒毛和牛種や交雑種そして乳用種といったものが軒並み値上がりしています。
豚肉や鶏肉もですが、外国産と比べるとかなりの値段差がありますね。

「国産牛はちょっと高い」という程度ではなく、「もう手がでない」そんなレベルになってしまいました。

部位によってバラツキはあります、10年前と比べると1.5倍以上の価格になっています。和牛のウデ肉のスライスで100g600円くらいで販売していたものが、100g900円~1000円くらいになってるイメージです。

「国産を食べたい。でも値段が高い」
「外国産はなんだかこわい」

こうなると、もう
「お肉はやめとこうか。」
となってしまいます。

昨年は
「老後の生活費が2000万円不足!」
なんて話が飛び出し、
「消費税率アップ!」がありましたから、単価の高い国産牛肉への買い控えが起きるのは仕方ないことです。

「国産牛肉やめて外国産牛肉か豚肉にしとこか」

ちょっとこうなるだけで、売上って簡単に半分になります。
忙しさは変わらないのに・・・

外国産牛肉といえば、いま最も身近なのが「アメリカ産ビーフ」もしくは「オージービーフ」ですよね。 

2007年にはUS産ビーフが日本のスーパーマーケットを中心に再び出回ることになりましたが、ここ2~3年で、本格的に取扱い量が増えてきました。

これを機に、コストコなどの量販で安売りされ、焼肉屋での取り扱いが増え、「いきなりステーキ」などのステーキ屋が乱立をし始めました。これはアメリカ産ビーフあってのことです。

オーストラリア産も多く輸入されていたのですが、日本人の口にあわずあまり受け入れられませんでした。もちろん、これが好きなひとはいますが、多くのひとは苦手だったようです。
オーストラリア産は加工用やハンバーグがメインでした。味付けも濃くしないとくさい、おいしくないと評価されてきました。

ちなみに
吉野家の牛丼はアメリカ産ビーフです。
すき家の牛丼はオーストラリア産ビーフ、いわゆるオージービーフです。

吉野家の牛丼よりも味付けがこく、甘ったるいのがすき家の牛丼かなと感じています。吉野家なんて、「アメリカ産じゃないとうちの味はだせない!」と一時期牛丼販売を停止した時期がありました。

この違いの根底にはそもそもの肉の味の違いがあります。
ではいったい「肉の味」ってどうやって決まるのでしょうか。

お肉の味を決める要因はなに?

よく、
「黒毛和牛はおいしい!」とか「〇〇(銘柄)牛」はおいしいといわれます。
お店にも「黒毛和牛はありますか?」とお買い求めいただく方がいます。
「外国産はくさいから」と最初から遠慮される方もいます。

ですが結論からゆうと、肉の味を決めるのは、「産地」でも「畜種」でもありません。
肉の味を決めるのは
・飼料の種類 何を食べて育ったか。
そして
・肥育期間の長さ それをどれだけ食べたか。 
これにつきます。これで98%決まります。
その他2%の要因としては
・畜種・血統(黒毛和牛とか、ホルシュタイン種とか、アンガス種とか)・生産者の人柄・風土
です。
異論は有るかと思います。
味なんてそもそも食べた方がいかように感じるかできまるものですし。
黒毛和牛!だとか、生産者がしっかり丁寧に育ててる!と聞くと、「美味しいに違いない!」と思います。たしかにその部分もとても大切です。
一般的には毎日産地や畜種の違う牛肉を食べ比べしているわけではありません。同じ程度の霜降り具合のお肉を食べても産地や畜種まで言い当てることはなかなかでできないのが普通でしょう。

ですが、霜降り肉か、赤身肉の違いくらいははっきりと分かる方は多いと思います。
この違いは上記の「飼料の種類」と「肥育期間の長さ」で決まります。
まずはそこから見ていきたいと思います。

まとめると
お肉の味は(あなたにとっておいしいかどうかは別にして)
1)飼料の種類
2)肥育期間の長さ
3)畜種・血統・生産者の人柄・風土
で決まる。1)と2)でほとんど決まる。
ということです。

飼料の種類

いま日本で入手しやすい牛肉を飼料の種類で分類してみると

I)濃厚穀物A(+粗飼料)
II)放牧牧草(+補助飼料)
III)放牧牧草後濃厚穀物B

が挙げられます。非常におおざっぱな分類ですが。

濃厚穀物Aはトウモロコシ中心
濃厚穀物Bは麦中心
粗飼料は稲わら
放牧牧草はイネ科・マメ科の牧草
といった感じです。
牛の成長段階によって与えられる飼料はことなりますので、主に肥育段階での分類です。

I)濃厚穀物A(+粗飼料)

日本やアメリカの牛肉です。トウモロコシ中心です。霜降りが入りやすく、香りがある。やわらかい。臭みが少ないといった特徴があり、焼肉店やステーキ店で使われているお肉の大半はこちらです。国産は高いのでアメリカ産がほとんどですが(笑)
日本人の多くに親しみのある味です。日本の和牛の霜降りはアメリカ産牛肉への対抗の延長線上で生まれたといえます。

II)放牧牧草(+補助飼料)

オーストラリアやNZからの牛肉です。最近ではウルグアイやアルゼンチンからも入ってきています。
いわゆるグラスフェッドです。 今は日本でも人気ですね。ただし、昔は独特な香りがだめな日本人も多く、あまり人気がありませんでした。外食や加工食品のミンチ材として使われるのが主でした。もしくは地方のスーパーの安売りアイテムでした。牛ロース切り落とし 100g100円!なんて感じで。

(+補助飼料)とありますが、この補助飼料によって肉質にかなりの差がでます。

補助飼料=ほぼ穀物

なのですが、与える量、穀物の種類で肉の味、色、水分量がかわります。これについてはまたブログで扱いたいと思います。

硬さやどくどくの香りを解決するために、麦などの穀物を与え、若干の霜降りをいれることで肉がやわらかくなるようにしました。穀物を与えるとにおいも少なくなるようです。

III)放牧牧草後濃厚穀物B

これらはグレインフェッドと呼ばれるものになります。
 I)濃厚穀物A(+粗飼料) も
もちろんグレインフェッドなのですが、オーストラリア産やNZ産などのグラスフェッドとの対比で使われることが多いです。
一般的に放牧牧草飼育したあと出荷前に牛をフィードロットという区画に集めてきます。そこで、一定期間濃厚穀物飼育をしていきます。

穀物飼育の期間によって、
ショートグレイン
ミドルグレイン
ロンググレイン
とあります。こちらは「飼育期間」に関係してきますので、次回で触れたいと思います。

ショートグレインをひとつをとっても、放牧牧草飼育後に、どんな穀物をあたえるかで、かなり肉の味に違いがでてきます。
がっつり分けると、オーストラリアやNZ産のショートグレインフェッドとウルグアイやアルゼンチンのショートグレインではかなり違います。オーストラリア・NZは麦が主体なのに対して、南米のショートグレインはトウモロコシが多いように思われます。肉色、味わいかなり違う印象です。どちらかといえば南米のショートグレインのほうが、日本人にはあってる感じがします。
グラスフェッドでは、日本や欧州市場に受け入れられにくいので、仕上げに穀物肥育をかけて付加価値を付けたという感じです。

II)肥育期間については次回のブログで見ていきたいとおもうのですが、
簡単にゆうと肥育期間の長さは「霜降り具合」の違いになってあらわれます。霜降りが多いほど、濃厚な味でやわらかくなります。(鶏肉の場合ちょっと違いますが)
またコストにも直結するので、なるべく肥育期間を短く、霜降りを多くいれたいという誘因が働きます。昔の和牛はおいしかった!といわれる原因かもしれません。

今回のまとめ

一般的な日本人が
多くの日本人が慣れ親しんできたのが国産やアメリカ産の「トウモロコシ主体の穀物肥育」です。
日本の食肉産業は「アメリカ産ビーフ」とともにありました。
焼肉屋やステーキ屋の盛衰の歴史をみてもわかります。
アメリカ産牛肉の自由化とともに、焼肉屋やステーキ屋が一気に増えました。
一時期、アメリカ産牛肉が日本の市場から消えると、これらの飲食店は勢いを失いました。
そしてアメリカ産ビーフが復活すると勢いを取り戻しました。いきなりステーキなども登場しました。

同じ濃厚穀物飼料でもトウモロコシの変わりに大麦を与えると味わいがかなり変わります。
大麦主体の穀物肥育牛は、オーストラリアやNZで日本向けに飼育されています。
トウモコロシ主体の牛肉よりもかなりあっさりした仕上がりです。脂肪分はそれなりにありますので、やわらかいお肉です。
最近では「お米仕上げ」という売り方を見かけます。飼料米振興のための施策の結果です。
けれどもほとんどの場合で飼料の主体はトウモロコシです。お米は少し餌に混ぜてる程度だと考えてよいと思います。それでも肉の味わいには違いがでてきます。お米や麦が多くなると脂身があっさりする傾向にあります。トウモロコシが多いと脂身が薄いクリーム色になり少し濃厚な感じになるようです。

豚肉は一般的には濃厚穀物飼育です。たとえ放牧しててもメインは穀物です。こちらもアメリカや日本などのトウモロコシ主体の飼料とカナダ・ヨーロッパの麦主体ではかなり味が変わります。 一般的に前者の脂身は濃厚で、後者はあっさりです。

鹿児島黒豚などは「さつまいも」のイメージがありますが、こちらも多くの場合でトウモロコシがメインです。黒豚の場合は、「肥育期間」のほうが肉の味に影響を与えてると思われます。

鶏肉もほとんどの場合で穀物飼育です。
養鶏については「卵用」か「肉用」かで餌に対する要求度合がかなり違います。
卵用は「卵をより多く産んでもらう」ことが目的です。肉用は「より多くのお肉をつけてもらう」ことが目的となります。そして鶏肉については肥育期間は牛や豚とは少し違う形となってあらわれます。

ということで次回のブログは「肥育期間の長さ」です。