糖質制限と血糖値

 

大手放送局でも糖質制限食に基づくダイエット特集が多くなってきましたね。

これまでに糖質制限を推進されてこられた多くの方々のご尽力にただただ頭がさがるばかりです。

しかしながらTV番組という特性上「100%伝える」のは難しいと思います。意図せぬ編集になる可能性もあります。

これからますます「糖質制限は危ない!」とか「糖質制限で痩せない、むしろ太った!」などの反論がでてくるのでしょう。

そのほとんどが「糖質制限」と「食事制限」がごっちゃまぜになった裏付けのないものなんでしょうが。

「糖質制限は危ない!」という方は「糖質(主にグルコース)は脳の栄養素だ!」とか「血糖値が低くなると突然死するリスクがある!」といいます。まあその言葉自体は間違っていないかもしれませんが、かなり知識不足だと言わざるをえません。

血糖値ひとつとっても人間は糖質の出来る限り少ない食生活で生きるべきなのがわかります。
そしてそれは人間の歴史の中で、もうずっとそうであったのです。

 

血糖値とは

血糖値とは血液中のグルコース(ぶどう糖)の濃度です。
エネルギーのもとであるグルコースは血液によって全身に運ばれます。
解糖系でもエネルギーになりますし、ミトコンドリアでTCAサイクルによってエネルギーになります。

まあ現代人の食生活では脂肪に変わってしまうのがほとんどなようですが。

人間の血糖値はだいたい平均的に100ml/dlに保たれているようです。食事後や空腹時にはもちろん上下があります。

これは肉食であれ、草食であれ、動物の血糖値もだいたい100ml/dlあたりだそうです。

エネルギーをつかって大空に羽ばたく鳥は倍以上の血糖値をもつようです。

反対にノロマな亀やナマケモノは血糖値が低いようです。

スローな動きの生活をすれば血糖値は低くていいのかもしれませんね(笑)

今この瞬間の血糖の状態をみるのは血糖値ですが、過去にさかのぼって血糖の状態を調べるのが、「HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)」と呼ばれるものです。

HbA1cは、高い血糖状態が続くことで、ヘモグロビンという血液の中のたんぱく質が糖化されてできたものです。
このHbA1c値が高いと「糖尿病」のおそれがあるという目安になります。

HbA1cの正常値は4.3~5.8%で、6.5%以上だと糖尿病型と診断されるようです。

気をつけたいですね。

それでは人間や動物はこの血糖値をどう維持しているのでしょうか。

 

高血糖から守る仕組み

糖質を摂取すると消化され、グルコースが血液に吸収されます。すると血糖値が上がります。

そうなると膵臓から「インスリン」というホルモンが分泌され、血糖値を抑えようとします。

肝臓で一時的にグリコーゲンとして蓄えられますが、それも一時的です。余分なグルコースは脂肪酸に変えられ、脂肪細胞をどんどん大きくしていきます。つまり「太る」のです。

インスリン抵抗性が増して、インスリンの効き目が悪くなると、膵臓はインスリンを追加分泌します。これによって血糖値が乱高下するおそれもありますし、膵臓がぶっ壊れれば、もはや血糖は尿となり排出され糖尿病になります。ますます血糖値のコントロールは困難になります。高血糖は糖尿病以外にもさまざまな疾患の原因になります。

※インスリンは甘いものを摂取した時点から血糖値の上昇に備えて分泌されはじめるようです。食後すぐに血糖値を測定すると下がっているというケースもあるようです。

高血糖を解決する唯一無二の仕組みがインスリンです。

 

低血糖から守る仕組み

人間はなにもしなくてもグルコースをエネルギーとして使っています。脳みそもそうです。

グルコースしかエネルギーとして使えない目の網膜、赤血球などもあります。

また無酸素っぽい激しい運動をしたときにはグルコースが代謝されます。

血糖値が下がり始め、グルコースが血液中に不足しだすと、人間は脂質やたんぱく質からグルコースを作り出します。
いわゆる「糖新生」です。このとき解糖系であまった乳酸や体に蓄えられた脂肪、アミノ酸などからグルコースが肝臓(一部は腎臓)で作られます。

「グルカゴン」というホルモンがその糖新生のシグナルとして分泌されます。
二十四時間監視体制で血糖値が下がりすぎることのないようにしています。
※ちなみに肉食である猫は雑食である犬よりも糖新生が活発に行われているようです。人間も肉食になると糖新生が活発になるのかもしれませんね。

また「アドレナリン」、「コルチゾール」、「成長ホルモン」といったホルモンも血糖値の上昇を促すべく見守っているホルモンです。

低血糖になると脳は機能しなくなり、体も動かなくなってしまいます。昏睡したり、突然死したりする可能性もあります。

 

脂質代謝が健康的な人生への大きな一歩

ここでひとつ疑問がわきます。

高血糖状態から体を守るのは「インスリン」だけです。

低血糖から体を守るのは「グルカゴン」、「アドレナリン」、「コルチゾール」、「成長ホルモン」があります。

低血糖にならないようにしているホルモンは4つもあるのです。

どれかがうまく機能しなくても、その他のホルモンがセイフティーネットとして働いてくれます。

これに対して、高血糖から守ってくれるインスリンはひとりぼっちです。壊れればおしまいです。

人間の体がもともと高血糖をもたらす食事を想定しないで作られていると考えれば合点がいきます。

 

そして糖新生はおまけの機能ではありません。

人間の体からグルコースやグリコーゲンが枯渇すると、糖新生によって生命維持に必要なほとんどのグルコースを脂肪(グリセリド)などから作るようです。
また脂肪(脂肪酸)は細胞のミトコンドリア内でもTCAサイクルによってエネルギーに変わります。
脂肪酸を使うとグルコースよりも多くのエネルギーが産生されます。解糖系よりももっと大量のエネルギーです。

脂肪を活用してエネルギーをまかなうのが「脂質代謝」で、人間本来の病気にならない代謝であるといわれています。
炭水化物を極力制限し、たんぱく質と脂質たっぷりの食事が「脂質代謝」になる鍵です。

 

糖新生が活発に行われていると「ケトン体」も大量に生成されます

このケトン体がいままさに大注目を浴びているのです。

グルコースしか使わないと思われていた脳みそが実はこのケトン体もエネルギーとして利用できるのです。
しかも「アルツハイマー」にも有効とのことです。

さらに「がん細胞」はグルコースしかエネルギーとして利用できず、脂質代謝であることはがん克服につながるとして注目を浴びています。

Dr. Thomas Seyfriedは

「がんの餌はグルコースであり、がん細胞はグルコースによって成長し増大する。ケトン体エネルギーになったら、グルコースもインスリンもなく、がん細胞が成長するためのエネルギーを得ることができない」

と発表しました。元記事「Ketogenic diet beats chemotherapy for almost all cancers, says Thomas Seyfried」

 

 

あなたなら炭水化物中心の食事と高タンパク高脂肪の食事、どちらを今後も続けますか?