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カロリーってなんだろう

2016年3月に「The Obesity Code : Unlocking the Secrets of Weight Loss」 M.D. Fung Jason
http://amzn.to/2C9yY0j
という本が出版されていました。

なぜか日本語訳本が出版されません。

どんな本かということを簡単にゆうと

「カロリー健康理論」を否定し「ホルモン健康理論」が大切ということです。
「?」が頭に浮かんだ方も多いと思います。 

これでは簡単というよりもなにもわからないぞ!ですよね。

なので補足していきます(笑)

私たちが体の不調や肥満などでお医者さんや友人に相談すると、
「カロリーの取り過ぎ、控えなさい」とか「もっと運動しなさい」といわれます。

食べ過ぎはだめ、運動不足はだめということです。

わかりやすいですね。
いまやあらゆる食品にカロリーが表示されています。
その表示をみて、カロリーの低いものを選んでいくわけです。
同時にジョギングやウォーキングを試みます。

続けられないひとや、体重がリバウンドすると
「自分が悪いんだな、意思が弱いから」
となってしまいます。

これは間違いだよと「The Obesity Code」(以下OC)ではいっています。

「ホルモンバランスの不調が不健康や肥満を招く」
「ホルモンバランスを最適化する食事をしなさい」
がOCの主張するところです。そしてそのホルモンバランスを乱すものはなんだろうというのを説明しています。

ホルモン健康理論自体は彼が作ったものでなく、ずいぶん前から提唱されています。
私も過去に書いた学問所通信

新しい栄養学とケトジェニックダイエット(2015年10月掲載)
https://butcher.jp/hpgen/HPB/entries/38.html

新しい栄養学とケトジェニックダイエット その2(2015年11月掲載)
https://butcher.jp/hpgen/HPB/entries/39.html

でこのことに触れています。ホルモン健康理論という名前ではなく、「ケトジェニックダイエット」という
ことばを使っていますが。

えらいでしょ(笑)

この「The Obesity Code」は
このホルモン健康理論をこれまでよりもより明確に、そして簡潔に説明している点でとても優れています。
日本語訳がでないのがとても残念でなりません。

普段から健康で、特に問題ない人は、気づかないうちにこの「ホルモン健康理論」を実践されているのです。
しかしながら「カロリー健康理論」の罠に陥ってるひとが、私を含め大勢いるというのもまた事実です。

カロリーというものを理解するために一つ確認しておきたいことがあります。

総エネルギー消費量(Total Energy Expenditure)というものです。

これは

総エネルギー消費量 = 基礎代謝量(率) + 食事誘発性熱産生 + 非運動性活動熱産生 + 運動

カロリー理論では総エネルギー消費量は「総カロリー消費量」という言葉に置き換わっています。

ネットで調べればいろいろと出てきますが、

20代の男性であれば、1日2650キロカロリーだよとか、50代女性であれば1850キロカロリーだよと情報がでてきます。
あくまでも目安で個人差があります。運動量によって プラスマイナス200~300キロカロリーが目安になっています。

天下の厚生労働省様がお決めになられているのです(笑)
信じるほかないですよね(笑)

ですが、こうしたカロリーには大きく3つの問題があります。

一つは、摂取した栄養は「体内で燃えるのではない」ということです。

カロリーは実際に栄養素を燃やしたときに熱量をはかったものです。
糖質なら1g4キロカロリー、脂質1g9キロカロリーという根拠はこれです。
ですが、栄養素は体内で代謝されてエネルギーになるのであって、実際には燃えるのではありません。

二つ目は、カロリー制限すると代謝は落ちるということです。
例えば1日だいたい2500キロカロリーが必要ですよと言われたとします。
じゃあ、痩せたいからカロリーを減らそう、1日2000キロカロリーにしよう。
そしてすこしジョギングしよう、代謝を増やそうとするかもしれません。

問題は食事を減らしたら、総カロリー消費量も落ちるということです。
それもダイナミックに。
そのため、カロリー制限を始めた当初は、体重減少などの効果があっても徐々に代謝が釣り合うように落ち、その効果は薄れていきます。
さらにカロリーを制限しなきゃ!という強迫観念にさらされます。そうするとまた代謝が落ち、最悪の場合、鬱といってもいい状態に陥るのです。

では逆に運動して代謝を上げようするかもしれません。
ですが、総カロリー消費量にしめる純粋な運動が使うエネルギー量はごくわずか(5%)だとOCはいいます。
つまりその5%しか使われないエネルギーを運動で増やそうとしてもたいしたことはない、無駄ということです。

ジムのサイクリングマシーンやジョギングマシーンで、1時間汗かいて、使用したカロリーは「おにぎり1個」とか「ケーキ1個」と
画面に表示され、愕然とした方も多いのではないでしょうか。
でも、そんなもんなのです(笑)

もちろんまったく無駄ではありません。継続的な運動で筋肉を付けたりすることは、長期的に基礎代謝量を上げていきます。
ですが、カロリー制限と同時にはそれは続けられないということになります。

人間の意思ではどうにもならないのです(笑)

OCでは、摂取するカロリー量を増やせば、代謝は上がるともいっています。
もちろんその一時的な課程で、摂取カロリーが消費カロリーをオーバーすることで、太るということはおきるでしょう。

三つ目は、カロリーは同じではないというものです。
お肉1000キロカロリーとごはん1000キロカロリーは同じではないんです。

もちろん脂質は糖質よりカロリーが多いので、お肉1000キロカロリーはごはん1000キロカロリーよりも
少ない量になります。
量も大切ですが、お肉はタンパク質・脂質がほとんど。 ご飯は糖質がほとんどという栄養素の質・構成が決定的に違うのです。 
いいかえれば、おなじ1000キロカロリーでもなにを食べるかで、栄養の質が違い、身体に及ぼす影響が大きく変わってきます。

この2つ目と3つ目をもって、ホルモン健康理論が「カロリー健康理論が間違い」であるとするところです。

カロリー健康理論で忘れ去られてるもっとも大切なキーワードがホルモン健康理論が重要視する「ホメオスタシス」という言葉です。

このホメオスタシスについては次回♪

反芻動物の栄養生理学 その2

学長です。

月末のメルマガを発行いたしました。
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今月の特集コーナーは、

反芻動物の栄養生理学 その2」です。
スマフォの方はこちらから

今回のその2は少し内容が中途半端なのですが、来月に続く要となります。

辛抱して読んでくださいね(笑)

自律神経系をむやみにゆさぶらない–健康の秘訣

自律神経系というものがあります。
ヒトが自由にコントロールできない、自律している。
そんな神経系です。

自律神経系はヒトの生活と密接に関係していて、なにかのイベントに対して、
ヒトの恒常性を保つように働きます。必要なホルモンの分泌を促して、体調をコントロールしようとします。

肉体的や精神的に強いストレスを受けると、
自律神経系のうち、交感神経が刺激されます。

瞳孔はひらき、心臓の動きは活発になります。
まさに戦うモードになります。

怪我をしても出血量を減らすため、血管は収縮します。
ご飯食べてる場合じゃないので、腸の運動は抑制されます。
ちょっとおトイレに・・・といっている場合でもないので、排尿も抑制されます(笑)

そしてなによりも、「血糖値をあげる」ためのホルモンが過剰に分泌されます。
グルカゴンやアドレナリンですね。

血糖値を測定したことのあるひとはわかると思いますが、
ストレスを受けているときに血糖値を図ると、正常なひとでも140を超えていたりします。
(血はでにくいですが(笑)

こういったホルモンは蓄えられていたグリコーゲンを分解することで血糖に変えたり、
肝臓の糖新制を活発にして、血糖値をあげます。

そう、人間は糖質を取らなくても、十分すぎるほどの血糖値を上昇させることができるのです。

交感神経の反対が、副交感神経の刺激です。

糖質の多い食事をとると、副交感神経が刺激されます。
交感神経系の刺激により血糖値があがったあとも、副交感神経が刺激されます。

瞳孔はしぼみ、心臓の鼓動は落ち着きます。
逆に腸は運動が促進され、消化がよくなります。

そしてなによりも、血糖値をさげるための唯一ホルモン「インスリン」が過剰に分泌され、
血糖値をせっせと脂肪に変えて蓄えていくのです。

ストレスや糖質摂取で、交感神経や副交感神経が過剰に刺激されると
その行きつく先は血糖値の急上昇です。
そしてインスリンの過剰分泌→肥満→糖尿病です。

血糖値の急上昇を繰り返した結果、肥満になる方は
「太る能力が強い」といえます。

「太る能力が弱い」ひとはどうなるのでしょう。

細胞は糖の処理を行うため、細胞をがん化するかもしれません。

がん化した細胞が糖をエネルギーとしているのは知られた話です。

しかし最近では解糖系という糖代謝の亢進が、細胞をがん化するということが示唆され始めています。

日々受けるストレスが多い上に、食事の糖質が多い方はつねに糖代謝が優勢になります。

これをさけるにはどうすればいいか。

そうタンパク質・脂質中心の食事ですね♪
もちろん糖質制限食のことです。

タンパク質・脂質中心の食事は、中庸です。自律神経系をむやみに揺さぶることがありません。

免疫力も強くなり、ストレスにも強くなります。

実際にわたしがそうでした。

ここ2年、風邪をひいて熱がでて寝込んだりしていません。 

歯垢もたまりません。

穏やかな心もちで、ストレスにも強くなりました。

食事のあとに眠くなりません。

朝から晩まで元気いっぱい。

糖質制限食はブームだ!危険だ!エビデンスがない!など根拠のない批判に日夜さらされています。

ですが、日を追うにつれ、刺激的なことが判明してきています。

かたくなに糖質制限食を否定してきた日本糖尿病学会のトップが、みずから糖質制限食の実践者となりました。またゆるい糖質制限食を提唱してきた方がケトン体の有用性について認めました。

これからはきちんとしたデータがでてきて、糖質制限食の有効性が裏付けられていくと思います。

参考文献
「Is there a role for carbohydrate restriction in the treatment and prevention of cancer?」
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3267662/#B1

生化学(Biochemistry)のテキストにちゃんと書いてあること

HARPER'S ILLUSTRATED BIOCHEMISTRY

前々回の記事で画像を掲載していたけども、その説明を忘れていました。
その画像は↑に貼ってるものです。

これは

Harper’s Illustrated Biochemistry 30Th Edition P236です。

要約すると、

  • 多くの動物は飢餓や冬眠に備え、また食間のエネルギーを補うため、「余剰の炭水化物を脂肪として貯蔵」する。
  • 高糖質食では、脂肪合成の速度は大きい。
  • カロリー制限、高脂肪食、インスリン欠乏(糖尿病)では脂肪合成速度は遅くなる。
  • スクロース(グルコースxフルクトース)を摂取すると、脂肪合成が亢進する。

これを読んでびっくりしました。
ちゃんと書かれているではないですか。
糖質が一番脂肪合成速度が速いのです。しかも効率がいい。
果物に含まれるフルクトース(果糖)は摂取すると肝臓に一気に集まり、脂肪に変換されます。

生化学にはきちんと書かれてるけど、栄養学のテキストにここまで詳しく書かれてるのを見たことがありません。
なんだかお茶を濁した感じで書いています(笑)

別ページには「脂肪酸酸化(脂肪をエネルギーとして使う、ケトン体を産出する)の亢進は飢餓や糖尿病での特徴」と書いてますけどね(;´・ω・)
これはもはや説明不足ですね。
脂肪酸酸化の亢進は「低糖質な食事もしくは低インスリンレベルの食事によって起こる」を付け加えるべきでしょう。

昨日、北海道鹿部町で行方不明になっていた男の子(7歳)が6日ぶりに救出されました。
私の長男と同じ年くらいなので、本当に心配しました。
助かってよかったです。

偶然が重なり、寒さをしのぐことができ、また水も飲むことができていたようです。
ですが、ほとんど食事はとることができなかったようです。

発見されたときは、低体温ながらも、元気な様子でした。

彼に何が起きていたのでしょう。

「ケトーシス」

これしか考えられないですよね。

低インシュリン状態で、脂肪酸のβ酸化が進み、エネルギーとして利用。
そして余剰のアセチルCoAは、ケトン体となり、脳やその他の臓器でエネルギーとなった。

低体温になっていたのは、寒さのせいもあるかもしれませんが、ビタミンなどの栄養素不足を考慮して、
命を守るために、全身の代謝を落としていたのだと思います。
ですが、やはり、ぎりぎりのところだったでしょう。本当によかったです。

じっとしていたのも幸いしました。
もしも、チョコレートなどの糖質が中途半端に手元にあって、動き回ったとしたら、
逆に危なかったかもしれないですね。

ですが、このような視点で、今回の無事生還が語られることはないでしょうね。

MEC食の渡辺先生 TVに登場してました。

MEC食 渡辺信幸先生

 

昨日は尊敬する渡辺信幸先生が「林修の今でしょ!講座」に登場しました。

 

林修の今でしょ!講座

 

お声をお伺いするのは初めてでしたが、とても素敵な感じでした。

番組内容も面白い!とにかくわかりやすかったと思います。

※柳原可奈子さんはちょっと痩せましたね。

 

お肉の栄養の話がでました。

いま学問所通信でもお肉の栄養についてまとめています。
「学問所通信 特集コーナー」

実は次回2月15日発行する学問所通信で「ビタミン」の話をする予定でした。

今回の番組内容を踏まえて、ちょっとまとめてみたいと思います。

 

食肉の栄養

みなさんが比較的よく食べる、そして番組にも登場した部位の栄養成分表です。
含まれる栄養分は部位によっても異なります。

食肉の栄養成分

※空欄は測定未実施

ちょっと見にくい表で申し訳ないです。
食肉の5大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミン)の成分表になっています。

ざっとみると、豚肉は鶏肉よりも「水分」が多めです。これも番組でいっていましたね。水分が多いと傷みやすくなります。
またドリップも多くなってしまいます。

お肉よりもレバーのほうが格段に栄養価が高いですね。特にミネラルとレチノール。 レチノールは間違いじゃないかという感じです。まさに桁違いですね。

基本的にたんぱく質、脂質が豊富なのがお肉の特徴です。

豊富なたんぱく質が、皮膚の余分な水分を血管にもどし、むくみを解消するとおっしゃってました。

 

ビタミンとは

ビタミンとひとことにいってもいろんな種類があります。また当初はビタミンと思われていたものが、のちの研究で脂肪酸などだったりとわかったものもあります。

大きく分類すると、水に溶けやすい(水溶性)ビタミンと脂に溶けやすい(脂溶性)ビタミンがあります。

水溶性ビタミン

ビタミンB類やビタミンCが水溶性ビタミンです。
表記していませんが、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、ビオチン(B7)、葉酸(B9)も水溶性ビタミンに分類されます。

ビタミンCやビタミンB類はある程度過剰に摂取しても尿として排出されるため、問題ないとされているようです。
不足すると様々な問題がでますが、基本的にあまり不足するということがなく、影響が詳しくわかっていないケースもあります。

人間のエネルギーの代謝を助ける補酵素の役割をします。

脂溶性ビタミン

レチノール(ビタミンA)、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが脂溶性ビタミンです。
脂に溶けるので過剰摂取が問題になります。健康的に生きていくうえで様々な役割を果たします。

 

ビタミンの作用

疲労回復にビタミンB1

番組の中でビタミンB1が疲労回復によいとでてきました。
ポイントは豚肉に多い。 水溶性ビタミンということです。
豚汁が登場しましたね。
豚汁は水に融けだしたビタミンB1もお汁を飲むことでのがしません。

ビタミンB1は細胞の中のミトコンドリアがエネルギーをつくるのを助けます。不足すると筋肉痛や肩こり、目の疲れ、エネルギー不足になります。

また体の中にたまった老廃物を排泄する役割もあるようです。

貧血にはビタミンB12と葉酸

上記表では測定をしていないのですが、鶏肉にビタミンB12と葉酸も豊富なようです。
ビタミンB12が不足すると重度の貧血をもたらすことで知られています。
葉酸も不足すると悪性貧血の原因となります。

乾燥肌にはビタミンA

レチノールはビタミンAとも呼ばれます。ニンジンなどにカロテンとして含まれているのもビタミンAです。
夜盲症にもいいのですが、皮膚や粘膜の角質化と皮膚の異常乾燥を防ぎます。

摂り過ぎると、皮膚の荒れ、痒みの原因になります。

脂溶性のため蓄えられるビタミンなので過剰になる危険もあります。ちょっとやっかいですね。

これ以上書くと、番組の丸パクリになり怒られそうなので、このあたりで。

最後にカルニチンについてだけ(笑)

 

生理活性物質

カルニチンは食肉に含まれる生理活性物質と呼ばれるものです。
実は赤身の牛肉にもっとも多く含まれます。

100g中
牛肉 135mg
豚肉 65mg
鶏肉 40mg

カルニチンは長鎖脂肪酸がミトコンドリアの中に入り、エネルギーの材料となるのを助けます。
長鎖脂肪酸はいわば、私たちが内臓や皮膚の下に蓄えている脂肪です。
この脂肪がミトコンドリアの中に入るのを助けます。
まさに脂肪燃焼効果があるといわれる所以ですね。

 

もっと書きたいことがやまほどありますが、ここらへんで。

ちなみに番組の最中に、豚汁がでてきましたが、ちょうどその時、豚汁を食べてました。
びっくりしました(笑)
豚脂汁
まあ、我が家は「豚脂汁」なんですけど。